男性の性被害 声上げづらく…理解してくれない周囲 「訴えは恥ずかしい」意識

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 ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題で、男性の性暴力被害に対する関心が高まっている。被害は若者を中心に起きているが、理解されにくく、表面化しにくいのが特徴だ。実情を知り、声を上げやすい環境を整えることが求められている。(木引美穂、加藤亮)

 相手の性別に関係なく、望まない、同意のない、体への接触や性的な行為は、性暴力だ。2017年には、性犯罪に関する刑法が改正され、女性の被害しか想定していなかった 強姦ごうかん 罪が、性別を問わない「強制性交罪」に変わった。

 臨床心理士で、男性の性暴力被害に詳しい立命館大学大学院の宮崎浩一さんは「性暴力被害に性別は関係ない。男性も様々な形態の被害を受けている」と言う。

 内閣府が22年に実施した若年層(16~24歳)の性暴力被害の実態に関するオンラインアンケート(6224人が回答)によると、男性で、身体接触を伴う性暴力に遭った割合は5・1%、性交を伴う性暴力は2・1%だった。

 しかし、男性の5割超は、「恥ずかしい」「相談しても無駄」などを理由に被害を誰にも相談しなかった。

 宮崎さんによると、男性の被害では、「男が被害に遭うなんて」と信じられなかったり、加害者が女性だと周囲から被害として認められなかったりすることも多い。「被害者が被害と言っていいのかわからなくなり、相談機関につながらず、問題が潜在化しやすい」という。

 部活動や宴席で下ネタを聞かされたり、ズボンを下ろされたりするのも、「悪ふざけ」ではなく性暴力になり得るが、人間関係や生活への配慮から声を上げにくい。

 宮崎さんは「望まない、同意のない、また対等でない関係での性的な行為や言動は性暴力であることを、社会全体で認識するべきだ。被害者が支援を受けられ、加害者の責任がきちんと問われなければならない」と話す。

 国は昨年、男性や性的少数者の性暴力被害について、初の実態調査に乗り出した。被害者を診察した医師への聞き取り調査などを行い、24年度中に診療・支援マニュアルをまとめる方針だ。主導する島根大教授の河野美江さんは「充実したものにして、被害者を支えていきたい」と話す。

寄り添った相談先・支援必要

 男性の性暴力被害に関する相談は、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター全国共通番号(♯8891)」で受け付けている。全国各地の相談機関につながる。そのうちの一つ、「性暴力救援センター日赤なごや なごみ」(名古屋市)では、活動を始めた16年1月から23年3月末までに、2396人から電話相談を受けた。このうち男性は158人で、約30人が直接面談した。

 副センター長で泌尿器科医の山田浩史さんは「男性被害の実態は知られておらず、解決の道筋を想像できない。被害者が実際に相談するには、勇気が必要だ」と話す。

 同センターなどの相談現場では、法律家や医療機関、行政などと連携し、被害者が望む支援を、信頼関係を作りながら考えていくという。性感染症にかかっていないかなど、医師の診察につなげることも検討する。

男性の被害者に相談を呼びかける「性暴力被害者支援センター・ふくおか」のホームページ
男性の被害者に相談を呼びかける「性暴力被害者支援センター・ふくおか」のホームページ

 被害を受けた後は精神的に不安定になることもある。福岡県の「性暴力被害者支援センター・ふくおか」の担当者は「安心できる場所で休養し、信頼できる家族や友人に相談することも考えてほしい」と呼びかける。

 被害を打ち明けられた人は、被害者を否定するような言葉は言わず、受け止めることが大切だ。勇気を出して相談しても否定されたら、被害者は口をつぐんでしまう。

 山田さんは「被害者は悪くない。被害者も周囲の支える人も問題を抱え込まずに相談してほしい」と話す。

◆性暴力被害にあったら
・安全な場所に移動する
・ひとりで抱え込まず公的機関などに相談する
・けがの手当てなど、医療機関を受診する
・安心できる場所で、しっかり休養する

◆被害にあったと相談されたら
・「あなたは悪くない」と繰り返し伝える
・話を信じて、気持ちを受け止める
・自分の心身にも気を配り、無理しない
 (山田さん、性暴力被害者支援センター・ふくおかへの取材を基に作成)

被害にあった際の相談先

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター全国共通番号 (最寄りのセンターにつながる)
 ♯8891

性犯罪被害相談電話 (最寄りの都道府県警察につながる)
 ♯8103

性暴力に関するSNS相談 「Cure time」
  https://curetime.jp

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