幻の味「鯨の王様」脚光…ナガスクジラ生肉、苫小牧の市場あす取引 

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根室市沖で水揚げされ、関鯨丸に収容されたナガスクジラの雄(24日、苫小牧市で)=日本捕鯨協会提供
根室市沖で水揚げされ、関鯨丸に収容されたナガスクジラの雄(24日、苫小牧市で)=日本捕鯨協会提供

 「鯨の王様」「鯨食界の本マグロ」などとして珍重されるナガスクジラの人気が道内で広がりつつある。漁場に近く希少な生肉が活発に取引される土地柄が背景にあり、28日には初めて苫小牧の市場にも出される。捕鯨母船の運航会社は、試食会などを通じて鯨食ファンの掘り起こしにつなげたい考えだ。(森近正)

■体長20メートル超

 昨年末、札幌市中央卸売市場にナガスの生肉が初めて出荷された。食通が好む「尾の身」を1キロ10万110円の最高値で落札した安彦水産(札幌市)の安彦 哲盛たかしげ 専務は「ミンクなどに比べ、くせがなくおいしい」と太鼓判を押した。

 ナガスは体長20メートル超になる大型のクジラだ。鯨食文化の維持・発展などに尽力する日本捕鯨協会(東京)などによると、国際捕鯨委員会(IWC)が資源保護のため1976年にナガスの捕獲を一時停止し、87年には対象を全種に広げ、商業捕鯨は終了した。日本は88年以降、頭数などを調べる調査捕鯨に切り替えて捕獲を継続したが、対象はニタリ、イワシなど中型のクジラに限られ、ナガスは「幻の味」となった。

■半世紀ぶり

 転機は2019年、日本がIWCから脱退したことだった。日本近海で商業捕鯨が再開され、24年には半世紀ぶりにナガスの捕獲も復活。山口県・下関港を母港とする捕鯨船団は昨年から年数回、根室沖やオホーツク海に出漁した。

 ただ、捕獲したナガスは母船で解体処理後、大半は冷凍保管することから市場に生肉を供給できるのは鮮度を保てる漁期終盤の数日間の獲物に限られる。そのため生肉の多くは、漁場に近い札幌で競りにかけられることになる。

 同協会によると、今年6月に札幌のほか、東京、大阪、福岡など5市場に試験的に出された際には、全体の平均が1キロ6416円だったのに対し、札幌は2万2000円と大消費地の3倍超で競り落とされた。同協会の担当者は「道内でおいしさが広まりつつある」と自信をみせる。

 そこで今回、捕鯨母船「 関鯨かんげい 丸」(全長112・6メートル、9299総トン)を中心とする船団が入港する苫小牧市の市場でも初めてナガスが取引されることが決まった。根室沖などで捕獲したもので、捕鯨母船を運航する「共同船舶」(東京)が28日に札幌市中央卸売市場に生肉約3トンを出し、その一部約70キロを苫小牧市の市場にも急きょ流すことにした。

■若者にPRへ

 人気が広がりつつある一方、課題もある。鯨肉は、中高年世代にとっては学校給食で竜田揚げなどに親しんだ食材だが、若者たちにとってはなじみが薄いことだ。同協会は同市の協力も得て小学生らの試食会も開く計画で、「若い世代のファン開拓につなげたい」としている。

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