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暑熱環境下における
運動後の強炭酸水の
摂取効果

暑熱環境下での運動後の
強炭酸水の摂取が、一時的な
低血圧状態や
気分などに
与える影響を検証

夏季、炎天下の中で運動をした後、ぐったりと疲れたり、立ち上がったときにふらついたりした経験をされた方は少なくないでしょう。気温が高い、いわゆる暑熱環境下で運動をすると、低血圧になりやすく、この応答が過剰に起こると脳への血流が一時的に減少した結果、めまいや立ちくらみなどの症状が起きることがあります。しかし、今のところ運動後の低血圧を防ぐ方法はあまり知られていません。

そこで、そのような症状に炭酸水を役立てることができないかと考えアサヒ飲料は筑波大学との共同研究(研究代表:体育系、藤井直人准教授)により、暑熱環境下での運動後における強炭酸水の摂取が、心血管反応(平均動脈血圧、中大脳動脈平均血流速度〔脳血流量指標〕など)、発汗反応、体温、呼吸反応、主観的評価(口の刺激感、口と全身の爽快感、眠気など)にどのような影響をおよぼすのかを調査しました。

過去の研究(No.8)では、暑熱環境下で安静時における強炭酸水の摂取により、中大脳動脈平均血流速度が増加したり、眠気が減少したり、意欲および爽快感が向上したりする可能性があることが示唆されました。今回の研究では、安静時ではなく「運動」という負荷を加えた状況でどのような影響をおよぼすのかを調査しました。

主観的評価は、VAS*1を用いて測定しました。

*1 Visual Analogue Scale

強炭酸水の摂取後、
一時的に血圧が上昇し、
運動後に下がる血圧が
回復した

今回の実験は、健康で運動習慣のある若齢成人12名(男性7名、女性5名)を被験者に、暑熱環境を想定した室温35℃、相対湿度50%に制御された実験室内(人工気象室)で実施しました。

実験室にて20分間安静にした後、自転車運動を60分間行い、その後の座位で回復期間中に2回(運動後20分、40分)、強炭酸水または水を30秒かけて摂取しました。それぞれの飲料を男性は150ml、女性は100ml摂取しました。摂取する飲料の順序は参加者には知らせず、結果に影響を与えないようにしています。

その結果、以下3つの項目で、強炭酸水を摂取した場合で有意差が見られました。

まず平均動脈血圧(血圧)について、強炭酸水を摂取した場合と水を摂取した場合のどちらも、運動後20分の時点で一時的に血圧は上昇しましたが、強炭酸水のほうが有意に大きく上昇しました。

血圧の変化

運動後20分経過時・摂取1回目
(摂取前ベースラインからの変化値)

血圧の変化 運動後20分経過時・摂取1回目(摂取前ベースラインからの変化値)

強炭酸水を飲んだ場合のほうが、血圧がより大きく上昇しました。

強炭酸水の摂取により、
脳血流量指標が増加した

次に、中大脳動脈平均血流速度について、強炭酸水を摂取した場合と水を摂取した場合のどちらも、運動後20分の時点で一時的に中大脳動脈平均血流速度は上昇しましたが、強炭酸水のほうが有意に大きく上昇しました。

脳血流量指標の変化

運動後20分経過時・摂取1回目
(摂取前ベースラインからの変化値)

脳血流量指標の変化 運動後20分経過時・摂取1回目(摂取前ベースラインからの変化値)

強炭酸水を飲んだ場合のほうが、中大脳動脈平均血流速度がより大きく増加しました。

強炭酸水の摂取により、
運動後における
口腔内の刺激感や爽快感、
眠気にも変化が見られた

最後に、VASによる主観的評価を検証した結果、強炭酸水、水ともに摂取によって、運動後40分の時点で口腔内の刺激感や爽快感の増加、眠気の抑制が見られましたが、この反応は強炭酸水のほうが有意に大きくなりました。

知覚・気分(主観的評価)の変化

運動後40分経過時・摂取2回目
(摂取前ベースラインからの変化値)

口の中の刺激感

口の中の刺激感

摂取により感じた「口腔内の刺激」は、強炭酸水のほうが有意に高まりました。

口の中の爽快感

口の中の爽快感

摂取により感じた「口腔内の爽快感」は、強炭酸水のほうが有意に高まりました。

眠気

眠気

強炭酸水、水ともに飲用により、運動後40分の時点で眠気が減少しましたが、
その効果は強炭酸水のほうが有意に大きくなりました。

今回の実験結果により、暑熱環境下での運動後における強炭酸水の摂取は、水を摂取した場合よりも血圧を大きく上昇させ、脳血流の増加も大きくなることがわかりました。
 また、運動後の気分をすっきりさせたり、眠気をやわらげたりすることも明らかになりました。

暑熱環境下における運動後の
強炭酸水の摂取は、
一時的に低血圧状態を
改善し、
気分を改善させる
可能性がある

今回の研究から、暑熱環境下で運動後に炭酸水を摂取することで、まず「一時的に血圧を上昇させ、低血圧を抑制し、脳血流指数を上昇させる」、そして運動後しばらく経ってからは、「口腔内の爽快感が高まったり気分が改善したり、眠気が軽減したりする」という可能性があることが示唆されました。

これらの効果を期待できる炭酸水は、手軽に入手できるものです。暑熱環境下での運動後、立ちくらみや気分の不調を防ぐための手軽な対策になることが期待されます。

日常生活に置き換えてみると、真夏の通勤通学時に駅まで歩いた後や、屋外での活動後などに炭酸水を摂取することで、立ちくらみ防止や、リフレッシュに活用できる可能性が高いといえます。

実験概要
  • 実験開始の24時間前から激しい運動、カフェイン、アルコールの摂取を禁止
  • 実験前夜に500mlの水を摂取、実験当日のセッションの少なくとも2時間前にさらに500mlの水を摂取
  • セッションの2時間前に同じ軽食を摂取
  • 実験環境:室温35℃、相対湿度50%に制御された実験室内(人工気象室)
  • 飲料の温度:4℃
  • 人工気象室に入室し20分間安静にした後、運動開始
  • 運動はペダリング速度60rpmを維持しながら、事前に決定した最大酸素摂取量の約45%で半臥位自転車運動を60分間継続
  • 運動終了後50分間半横臥位で休み、その間に運動後20分と40分(摂取1回目と摂取2回目)の約30秒以内にストローを用いて水または強炭酸水を摂取
  • 各種計測データは飲用前1分間(ベースライン)と飲用中1分間の平均値を比較
  • 別の日に、飲料を代えて同じ試験を実施(参加者は試験の順序を知らされず、2つの試験は少なくとも5日間離れて実施)
  • 測定項目:中大脳動脈平均血流速度、平均動脈血圧、心拍数、心拍出量、総末梢血管抵抗、換気量、前腕部・胸部発汗量、前腕部・胸部皮膚血流量、直腸温、皮膚温、主観的感覚 (温度感覚、熱快適性、爽快感、眠気、意欲、刺激感、腹部膨満感)

実験方法

実験方法
摂取は飲料を摂取するタイミング。自転車運動前は安静時間を20分とった。
飲用後50分間でデータを取得。1回目の試験から5日以上空いた別日に、被験者は飲料を代えて同じ試験を実施(対照試験)。

出典:Ingesting carbonated water post-exercise in the heat transiently ameliorates hypotension and enhances mood state(First published:14 August 2024に論文掲載)
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/EP091925