衆参予算委員会 内容も運営も旧態依然では
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衆参両院で自民党は少数与党となり、党の浮沈を託された初の女性首相が答弁の先頭に立っている。一方、新興勢力の台頭で多党化も進んだ。
今国会は、多様な民意を反映した、新たな時代の論戦のモデルになるはずだったが。
肝心の審議内容は、野党による政府側の揚げ足取りが依然として目立つ。首相や官僚が答弁の準備のため、多大な労力を割かねばならないという旧態依然とした運営も、変わっていない。
審議の内容も、国会運営のあり方も見直していく必要がある。
衆院予算委員会の初日、高市首相が質疑に備え、午前3時に首相公邸に入ったことが物議を醸した。官僚の作る答弁書が出来上がる時間に合わせたという。
野党の政府側への質問通告は委員会前日になることが多いため、答弁書の作成が遅れる、との指摘がある。だが、それが本質的な問題とは言えない。
首相が答弁準備に時間をかけるのは、政策の裏付けとなる細かいデータなどを、首相の口から答えさせようとする議員が多いことが影響している。
実際、参院の審議では生活保護の不正受給者数を首相に問いただす議員もいた。失言や答弁ミスを誘っているのではないか、と疑いたくなる質問も見受けられた。
かつて、事実関係に関する細かい質問は「政府委員」として官僚が答弁していた。政治改革の名の下、1999年に政府委員制度が廃止され、原則として政治家が答弁するようになった。
官僚を遠ざけることが政治主導だという誤った認識が、国会質疑を空疎なものにしている。
今回の予算委では、質問内容に首をかしげたくなるものも散見された。立憲民主党の衆院議員は、自民党総裁選で首相が「奈良の鹿を蹴る外国人がいる」と述べたことを15分にわたり取り上げた。
首相が排外主義的であると印象づける狙いがあったのかもしれないが、首相就任前の発言を
最近は、SNSで主張を発信する政党や議員が多い。そうした影響なのか、国会審議への有権者の関心が高まっているとされる。
それ自体は歓迎すべきだが、政策論争からかけ離れた審議を続けていたら、政治不信は高まる一方だ。多党化時代の少数与党構造の下では、政策を巡る政府の説得力だけでなく、野党の質問力も問われていることを自覚すべきだ。