人口減少が招く「国民負担増」…最大の自衛策は「できるだけ長く働くこと」
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[人口危機]<8>
日本社会ではこれから、人口減少と「超高齢化」の急速な進展が予想される。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年には85歳以上の人口が1000万人を超える。
お年寄りは、医療・福祉など人手がかかるサービスを利用する。人口が縮小しても、必要な働き手はむしろ増える見通しで、リクルートワークス研究所は、40年の労働力不足は1100万人に達すると予測する。古屋星斗主任研究員は「好景気による人手不足とは異なる構造的な問題だ。深刻さは今後、年々増していく」と警告する。
人手が足りなければ、鉄道や路線バスの廃線など、日常生活に影響が広がる。介護や保育のサービスを利用できない現役世代が家族の世話に追われ、労働力がさらに失われる悪循環にも陥りかねない。
社会保障制度の維持も課題となる。現在の経済情勢が続くと仮定した政府の試算では、50年代半ばには国民年金と厚生年金の給付水準は、現在と比べて2~3割削減される。
しかし、学習院大の鈴木亘教授は、出生率の低下が政府想定を上回るペースで進んでおり、年金財政はさらに悪化する可能性があると指摘する。医療保険や介護保険の負担引き上げや、社会保障の財源となっている消費税の増税が予想され、国民負担は重くなっていくとの見通しを示す。
こうした事態への対応策として、鈴木教授は「一人ひとりが健康を維持し、できるだけ長く働くことが最大の自衛策になる」と話す。
働くお年寄りが増えれば、人手不足を補い、年金財政が改善するなど、社会にとっても利点は大きい。
総務省によると、昨年の65歳以上の就業者数は過去最多の930万人。10年間で248万人増加している。野村総合研究所が50、60歳代の就労者を対象に行った調査では、5割以上が「あと5年働きたい」という意向を示しており、今後も増加する可能性が高い。
定年制を廃止した企業もある。ファスナーや建材を手がけるYKKグループは、21年度から65歳を超えても正社員としてフルタイムで働くことができるようにした。年齢を理由とした給与の引き下げはしない。
多くの海外グループ会社にはない定年制度を、日本の本社が採用していることについて問題視する声が出ていた。現在は約250人が製造技術や販売管理など、様々な現場で活躍している。篠田芳夫人事部長は「会社の生産性向上や事業拡大に非常に有益な取り組みだ」と強調する。
女性の就業者数も昨年、過去最多の3082万人を記録している。子育てを母親任せにする傾向の是正や、長時間働くことが難しい人材を生かす「短時間正社員制度」の拡大など、出産後・育児中に働きやすい環境の整備は急務だ。
意欲と能力のある人が活躍できる場をいかに広げられるか。日本社会は変革を迫られている。
(おわり。この連載は、田村直広、中西梓、山下真範、増田知基、吉田尚大、有村瑞希、工藤武人、上地洋実、工藤彩香、藤原聖大、小杉千尋、新妻千秋、石橋龍馬が担当しました)