遠隔医療拠点を社長室に流用、コロナ対策補助金の半数で不適切事例…会計検査院が抽出調査
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コロナ禍で打撃を受けた中小企業に対する国の支援事業を巡り、2022~24年度に補助金を受給した企業を抽出調査した結果、半数で虚偽申請などの不適切な事例が確認されたことが、会計検査院が5日に公表した24年度の決算検査報告書でわかった。検査院は計25億6500万円分の支給に問題があったと認定した。
独立行政法人「中小企業基盤整備機構」(東京)は21年、中小企業庁の資金を基に、新規事業の展開や業態転換を図る企業向けの「事業再構築補助金」を創設。24年度までに約6万の事業者に対し、施設整備費や機械の購入費として1兆3740億円を交付した。機構は審査を大手人材派遣会社に委託していた。
このうち、現地調査が必要と判断した226事業者(62億円)を検査院が調べたところ、112事業者で問題が見つかった。〈1〉虚偽の申請で不正受給〈2〉購入品の目的外使用や無断処分〈3〉補助対象外――の計3億4000万円(20事業者)について、検査院は特に悪質だとみている。このほか、機構に出した報告書に事実と異なる記載をしたり、事業を短期間で中止したりする事例も問題視している。
機構は「補助金の返還を求めるなど、厳正な措置を進めていく」としている。
「需要を読み違えた。迷惑をかけて申し訳ない」。検査院の調査を受けた長野市の電子機器製造会社が取材に応じ、補助金全額を返還したことを明らかにした。
コロナ禍に対応するため、同社は医師が遠隔で画像診断できるシステムを作り、補助金8000万円を充てて拠点となる新社屋を建設した。ところが、医師の多くは自宅で診断を済ませたため、社屋は全く使われないまま社長の執務室や社員の作業室になっていた。
さいたま市の空調設備会社は、業者にキャンプ場の整備を外注したとする偽の書類を提出して機構から2500万円を受給した。実際には自社で施工し、業者から代金のキックバックを受けていた。スーパーを開業し、4000万円を受け取った松山市の鮮魚店は1年2か月で店を閉めた後、機構に無断でショーケースなどの備品を廃棄していた。
慶応大の太田康広教授(会計学)の話「コロナ禍という緊急事態の下で財政規律が緩んで支出が肥大化した上、審査を民間企業に任せたことで国のチェック機能も働かなかったのだろう。調査対象は一部にとどまっており、明るみに出た不正は氷山の一角だと考えられる」
検査院の24年度の決算検査報告書では、国による税金の無駄遣いや不適切会計は、前年度比17%減の540億円(319件)だったことが判明した。そのうち法令違反などにあたる「不当事項」は86億円(271件)だった。