<激変 京の大学経営・下>受験生に選ばれる時代
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偏差値から多様性重視へシフト
近年、京都を含めた関西圏の大学受験の大きな動きはコロナ禍を境に生じた自宅からの通学志向の高まりだ。同時期から多くの大学で受験回数が減った。読売新聞の取材に応じた大半の大学入試担当者は、家計状況が悪化し、多くの学生が親元を離れなくなり、その傾向が今でも定着しているとの見方を示している。
規模の大きい有名私立の総合大も例外ではない。京都産業大の松本光真・入学センター事務部長は「近くてコスパ(費用対効果)やタイパ(時間対効果)を重視する側面が加速した」と話す。京都市北部の景勝地に全10学部が集積するのが強みだが、推薦などを含め2020年度に7万人超だった志願者は、24年度に約4万3000人に減少した。「通うには遠い」という声が増えたと実感しているという。
こうした状況に対策に打って出る学校も多い。龍谷大は今年度、社会学部について、郊外にある瀬田キャンパス(大津市)から、市街地でJRや京阪電車など複数の公共交通機関を利用できる深草キャンパス(伏見区)に移転した。学科や専攻を改組した効果もあり、一般入試の志願者は1万466人で、前年度比1・26倍に増えた。
また、女子大堅持を宣言した京都女子大は今年9月、26年度入試から返済不要の奨学金の創設を明らかにした。成績に応じて授業料全額分の奨学金や、京都府、滋賀県、大阪府以外から入学する場合には寮費を無料とし、4年間の学費のうち教育充実費に相当する100万円の給付などの内容を設け、より広いエリアから学生を呼び込もうとする。
学部を増やし、多様で新しい学びをアピールする動きも広がっている。
京都女子大は学部の新設計画を明らかにしたほか、16学部がある立命館大は15年に京都、大阪両市の間にある「大阪いばらきキャンパス」(大阪府茨木市)を開設。広い通学圏を確保して学部の新設や移転先の中核に据え、10年間で6学部を整備してきた。
こうした背景にあるのは、大学のブランド力に対する考え方の変化だ。
一般入試の偏差値と大学のブランド力は強く相関している。しかし、人口減少に伴って志願者が減り、競争が緩和したほか、24年度には国公私大の全入学者は、総合型選抜や推薦などの利用が一般入試を上回る状況に至った。受験生に選択の幅が広がる中で「行きたい大学」に選ばれるには、学力の格付け以外にも「知名度、規模、多様な学びができることをアピールすることが欠かせない」(同志社女子大の古原勝生・入学課長)という。
特に4年制大学だけで30校超がひしめく京都では、規模や学部構成で競合する場合が多く、毎年のように再編が明らかになる。ある大学の入試担当者は「常に新しい動きを発信しないと印象に残らない。それでも受験生や保護者の心に刺さる賞味期限も短い」と苦悩を打ち明ける。
こうした中、各大学関係者が期待するのは、女性受験者の潜在力だ。
24年度の女性の大学進学率は56・2%。男性より5・7ポイント低い。工学部などの理系で、特に女性が少ない状況が続いている。
先進国の中でも格差があるが、10年度は11・2ポイント差で、年々その数値は縮まってきている。この間の男女の入学者の人数差も約8万人から約4万人にまで縮小した。
7学部に在籍する学生男女比がほぼ同じの佛教大の柿本航・入学課長は、保護者の多くが大卒となり、女性の社会進出などの変化を目の当たりにした世代であることに着目する。「今の保護者は、性別は関係なく、子の就職など将来像への期待を大学に求めている。そのためにも多様な価値観に触れられる場かどうかが、大学側は問われている」
人口減少が進む中、若者にどのような未来像を示せるのか。生き残りをかけ、京都で激変する大学経営の取り組みは、日本の将来を占う試金石でもある。(この連載は矢沢寛茂が担当しました)