「いずれは団地を離れないかん」10往復→2往復、バス大幅減便で生活に打撃…車社会で乗客離れ、深刻な運転手不足
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とさでん交通(高知市)の路線バス、路面電車で厳しい経営状況が続いている。乗客の減少に運転手不足が追い打ちをかけ、県と高知市も対策を進める。住民の移動手段である公共交通の現状と課題を追った。(古谷禎一)
「しなね様」で知られる高知市一宮の土佐神社に近いトーメン団地。大阪の商社が丘陵地を開発して1975年頃に入居が始まり、約340世帯、約750人が生活する。はりまや橋など市中心部とを結ぶバス路線は80年に開設。住民らの署名活動で実現した。
しかし、昨年10月のダイヤ改正で1日2往復になり、それまでの同10往復以上から大幅に減便。とさでん交通の改正前の調査では団地内の乗降客はほとんどの便で5人以下だったという。
「(減便は)ショックでした。買い物帰りに荷物を持って急な坂道を上るのはしんどい。いずれは団地を離れないかん」。病院などへ通う際に週3日は利用していたという80歳代女性が嘆く。今は自宅から20分近く歩いて県道に出て、一宮神社前停留所を通るバスに乗る。
団地自治会長の男性(76)は「自治会便りに『乗って残しましょう』とたびたび書いたけれど、みんな車を持つようになってバスに乗る人は減った。仕方ないという思いもある」と振り返る。
とさでんのバス路線は、2014年10月の会社発足時には、203系統、平日1日あたりの走行距離は1万4306キロあった。それが今年10月には63系統、6085キロまで減った。背景には深刻な運転手不足がある。現行ダイヤの維持には124人が必要だが、現在は108人で平均年齢も50歳代半ばと高い。今後5年間で約4割減少するとの試算もあり「運転手が足りなければ夜遅い便などの削減もやむをえない」という。
同社の前身は高知県交通と土佐電気鉄道で、県民から「赤バス」「青バス」として親しまれてきた。車社会の到来で乗客離れが進んで「公共交通が維持できない状況」に陥って統合。県と沿線12市町村が計10億円を出資し、金融機関は26億~28億円の債権を放棄した。
経理や人事など管理部門の見直しなどで発足時に約38億円あった債務は19年度に約25億円に減少。だが、20年からのコロナ禍で利用者が大幅に減り、国や自治体からの補助金で赤字分を
24年度決算は黒字となったが、国や自治体の補助金などを除くと営業損益は3億4717万円の赤字。路線バス利用者は228万人でコロナ禍前の約8割まで回復したものの、前年度からは6・6%減少した。
高知市が21年に実施した市民アンケートでは、公共交通の日常的な利用者は1割に満たず、不便だと感じる理由に「便数が少ない」「利用したい時間帯にバスがない」などの厳しい声が寄せられた。
市は利用者減などで路線が廃止された12地域でデマンド型乗り合いタクシーを運行するが、タクシー運転手の確保も難しい状況。市交通戦略課の出口忠彦課長は「一般ドライバーによる民間ライドシェアなどの研究もして市民の足を確保していきたい」と話している。