[猫学]秋のひととき…猫と本と、ひと休み。
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記録的な暑い夏がようやく去り、窓辺を伝う風にほっとしている今日この頃です。膝の上では猫が目をつむり、その重みを感じながらページをめくる。そう、これこそ秋の幸福の“標準仕様”と言いたくなります。今回は、最近読んだ猫の本から、印象に残った一節や言葉を拾い、猫学的な読書の
ネコはどうしてニャアと鳴くの?
『ネコはどうしてニャアと鳴くの?』(ジョナサン・B・ロソス著、的場知之訳、化学同人)
《ただし、確かなことがひとつある。ノネコはオーストラリアでもほかの土地でも、血統ネコの一部の品種に見られるような極端な形質をもたない。ペルシャのようなつぶれ鼻のノネコや、現代のサイアミーズのような長い鼻先をしたノネコの写真を、わたしは見たことがない。短足、無毛、耳のカールについても然り。したがって、こう断言していいだろう――こうした品種のイエネコは、もしも野外に捨てられたら長生きできないか、たとえ子を残したとしても、世代を重ねるうちに自然淘汰が極端な形質を集団内から消し去ってしまう》
ペルシャ猫のつぶれ鼻は愛らしいものです。ただ、犬でいえばパグやフレンチブルドッグと同じ短頭種で、鼻の空気の通りにやや難があり、息が上がりやすい。人がかわいい、
人の
サイアミーズって何だろうと思った方がいるかもしれません。いわゆるシャム猫のことです。同書によれば、サイアミーズは1960年代半ばから20~30年のうちに、《長い鼻先をした》姿へと
こう書いているうちに、我が愛猫ハニーが小笠原諸島・父島の山中で捕まった際、作成された小笠原ネコノートのことを思い出しました。
小笠原で捕獲されたノネコは本土に渡るまでの間、一時飼養施設「ねこ待合所」で過ごします。東京都獣医師会や環境省などが進めるノネコ引っ越し作戦の一環で、NPO法人小笠原自然文化研究所の石間紀子さんが、捕獲場所や体重、毛色などを事細かに記録しています。これが小笠原ネコノートです。
石間さんはこれまでに約1000匹のノネコの世話をして、名前も付けてきました(ハニーもそのうちの1匹です)。そんな石間さんに聞いたところ、短頭種は見たことがないとのこと。シャム系の毛色を持つ個体はあっても、ペルシャ猫や、日本で依然として人気のあるスコティッシュフォールドといったタイプのノネコはいませんでした。石間さんの証言は、自然
ロソス氏は本書で、オーストラリアやマダガスカルのノネコの興味深い生態にも触れています。訳者の的場さんの文章は、翻訳であることを忘れるほど読みやすく、感服しました。
私が死んだあとも愛する猫を守る本
『私が死んだあとも愛する猫を守る本』(富田園子著、はしもとみお絵、行政書士 磨田薫監修、日東書院本社)
《万一のとき、愛猫を託せる人はいますか?》。猫と暮らす者にとって背筋が伸びる問いかけです。
このテーマは今年7月、読売新聞主催の「小泉今日子×ニャンコロジー 猫学フォーラムSpecial」でも取り上げられました。俳優で歌手の小泉今日子さんは、人見知りしない猫に育てようと、日頃から愛猫をいろいろな人に会わせており、家を空けるときはペットシッターに任せることもあるといいます。
ゲストの石田卓夫・ねこ医学会会長(赤坂動物病院医療ディレクター)は、飼い主に何かあったときどうするかを申し合わせた契約書を、猫の主治医や動物病院との間で交わす取り組みを紹介しました。弁護士も立ち会うとのことで、やや異例な感じもしましたが、最近では珍しくないのだそうです。
本書では、そうした飼い主に万一があった際の備えについて、図解や表とともに説明しています。《自分が倒れたらすぐに 気づいてもらうシステムを作ろう》等々の項目が設けられ、自治体の見守り制度や郵便局・警備会社のサービスなどの紹介もあり、実に行き届いた内容となっています。
監修の磨田薫さんはペットのための生前対策専門行政書士。はしもとみおさんの挿絵は、猫のことをよく知っているからこそ、猫の表情やしぐさを的確に描けるのだろうなあと思わされます。
著者の富田園子さんは、《自分に「もしも」のことがあっても、愛する猫を守りたい。そう考えるすべての人にこの本を贈ります》とつづります。入魂の1冊――読了して表紙を改めて眺めると、そんな言葉が想起されてきました。
にゃんこと整える。
『にゃんこと整える。』(小林弘幸著、アスコム)
《私はこれまで、食事や運動、呼吸などのアプローチから、自律神経をもっとも簡単に整える方法はないか、20年以上にわたって考え続けてきました。そして、あるひとつの答えにたどり着いたのです。それが猫です》
著者の小林弘幸さんは順天堂大学医学部教授で、自律神経研究の第一人者。医学書や一般書を多数執筆し、テレビ出演でもおなじみです。そんな小林さんが自律神経を整える最も簡単な方法として挙げたのが、まさかの猫。
《最近、がんばりすぎていませんか?》――そう呼びかける本書のページを開けば、小林さんが《自律神経によい刺激を与えてくれるかどうか》を基準にセレクトした猫たちの写真が現れ、自律神経を整えるためのヒントが添えられています。
《余計なプライドは捨てよう》《「期待」はしないほうがいい》《他人の反応は気にしない》《苦手な相手をわざわざ「モンスター化」しない》《孤独を楽しむ》……どれも実行しようとすれば、できないことはないと感じませんか。猫飼いでなくとも、この1冊があれば猫からの恩恵を大なり小なり受けられることでしょう。
膝のハニーが動かないから、こちらも動けない。そうこうするうち、気づけば本を読み終えていた。本を閉じても、腰を上げるのをためらってしまう。そんな秋の遅い午後です。
人間にとって、猫という存在はなんなのか。猫にとって、人間という存在はなんなのだろう。
古今東西の人々は猫を愛し、あるいは忌み嫌ってきた。猫は宗教や伝統をはじめ、絵画、文学、音楽といった芸術活動とも浅からぬ縁がある。
昨今の日本ではペットの猫の数が犬を上回り、海外でも似た現象がある。猫は家族と同様の扱いを受け、一部では熱烈な愛護の対象ともなっている。他方で、野生化した「ノネコ」は希少な野鳥を絶滅に追いやりかねない「小さな猛獣」であることが、科学的な調査で判明している。
猫学では識者へのインタビュー、猫にまつわるちまたの話題、科学部記者と暮らすノネコの日常をつづりながら、猫と人とのより良い関係に思いを巡らせていく。