広島の造船業が活況、輸出実績がここ10年で最高…体験航海・模型で船の魅力発信
完了しました
広島県内の造船業は、2024年に県別の輸出実績が3000億円を突破し、ここ10年で最高となった。この活況の中、造船、海運業が盛んな〈船のまち・尾道〉では、身近なところから海や船、海事に携わる人材を増やす取り組みが地道に続く。(西堂路綾子)
■海事教室
9月上旬、弓削商船高専(愛媛県上島町)の練習船「弓削丸」(全長56・33メートル、380総トン)が、体験航海で尾道市内の2小学校の児童約40人を乗せ、尾道水道を進んだ。
「ポート フィフティーン」。
市立重井小5年の児童(11)は「釣りの船に乗ったことはあるけど、こんな大きな船は初めて。本物のレーダーを見たり、舵を動かしたりしてすごく面白かった」と興奮気味に話した。
体験航海は、市内で希望する小中学校を対象に20年度から「海事教室」として実施。児童・生徒は船内を探検して構造を学び、動かし方を教わる。同高専は航海士や機関士らを養成しており、加藤船長らは「航海を体験した子どもたちが『船は楽しい』という思いを持ち続けてくれたら」と期待する。
■国内一の輸出額
日本の造船業は、1950年代に世界一となり、60、70年代に世界占有率の5割以上を誇ったが、90年代以降は円高などで競争力が低下。人件費の安い中国、韓国に抜かれ今は世界3位だ。
2007年頃は一時、海運バブルに沸いたものの、翌年のリーマン・ショックの余波で造船需要が低迷。20年のコロナ禍でも国際的に人や物の交流が滞り、国内造船業の工事量は危機的状況に落ち込んだが、21年春頃から受注は持ち直してきた。
神戸税関が9月に公表した資料によると、都道府県別の船舶輸出実績(金額)では、広島は24年までの10年で計6回トップとなり、15、17、23、24の各年は全国の2割強を占める。10年頃に完成した船舶が30年頃に更新時期を迎え、低・脱炭素船への移行も進むことから、今後も好調な受注が見込まれる。
■「世界に負けない」
同市因島田熊町の元商船マンの築山喜也さん(86)は、地元のもみじ銀行因島田熊支店で10月末まで、自ら製作した商船模型を展示。今も、船乗りの暮らしを生き生きと語り続ける。
幼い頃から、地元の造船所の進水式に行くのが好きで、18歳から30年間は商船三井の機関士を務め、世界中の船を見るのが何よりの楽しみだったという。
「シンガポールやアラビア半島、セイロン島など世界中を巡った。ひと月以上を過ごす船には娯楽室、体育室があり、大浴場のお湯は海水。
退職後の30年余りは模型作りに夢中になった。「船の中で働いとったから、船の写真を見ただけで設計図が頭に浮かぶ」ほど。船で働く人や模型愛好家らから製作注文が舞い込み、これまでに約100隻をウェブ上などで販売した。
救命ボートは消しゴムを削って作り、つり下げる装置には歯間ブラシを使うなど身近な材料をと工夫する。「日本の造船の技術力は世界に負けない。船の魅力を因島からも発信したい」と、精巧な模型でアピールする。