田久保伊東市長 公職に就く者の自覚はどこに
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市議選の結果から見て現職市長が住民の信頼を取り戻し、引き続き市政のかじ取りを担えるとは到底思えない。直ちに身を引くのが筋だろう。
静岡県伊東市で、田久保真紀市長が議会を解散したことに伴う市議選が行われた。
「東洋大卒」と学歴を偽ったとされる田久保氏は、9月の市議会で不信任決議を全会一致で可決された。田久保氏は辞職を拒否し、「不信任決議で審議がストップした」という理由で、市議会を解散していた。
選挙結果は、定数20のうち、田久保氏の支持派で当選したのは1人だけで、残る19人は田久保氏の辞任を求めて当選した。
19人は、近く招集される臨時市議会に再び不信任決議案を提出する方針だ。地方自治法では、首長に対する不信任決議が2度可決された場合、首長は失職すると定められている。田久保氏が居座ることは難しい情勢だ。
首長には議会を解散する権限がある。ただ、それは、首長と議会が政策や予算を巡って対立したときの行使を想定している。
学歴詐称問題という田久保氏自らの問題に端を発した解散は、権力の乱用と言わざるを得ない。
市議選の投票率は59・22%と、2023年の前回市議選を10ポイント以上、上回った。市民の関心の高さを表したと言えるだろう。
最近は伊東市の他にも、公職に就く者としての自覚や、その見識が疑われる事案が目に付く。
沖縄県の南城市長は、女性職員にセクハラ行為をしたとして、市の第三者委員会から辞職を促された。市議会は不信任を決議したが、市長は議会を解散した。
群馬県の前橋市長は、打ち合わせと称して既婚の男性職員とホテルで再三会っていたことが分かった。男女関係はない、という市長の説明に対し、市民からは納得がいかない、という電話が殺到し、業務に支障が出ているという。
居座りを続ける首長が増えているのは、兵庫県の斎藤元彦知事のケースが影響しているのではないか。斎藤氏は昨年、内部告発問題を巡って県議会から不信任決議を受けたが、失職の道を選び、その後の出直し知事選で再選した。
SNS上で支持を得れば続投の追い風になる、という風潮が広がることは、正常とは言えない。
兵庫県では、内部告発問題を巡る県政の混乱がいまだに収まっていない。一時しのぎの対応が奏功したとしても、長くは持たないということだろう。