東京医科大医学部入試の「性差別」を認定、1800万円賠償命令…1人当たり20万円の慰謝料
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医学部の不正入試問題で、東京医科大の医学部を受験した女性28人が、不当な性差別で精神的苦痛を受けたなどとして、同大に計約1億5200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、東京地裁であった。平城恭子裁判長は「努力や意思では変えられない性別を理由に不利益に扱い、不合理な差別を禁じた教育基本法や憲法の趣旨に反する」と述べて性差別を認定し、27人について計約1800万円を支払うよう同大に命じた。
同大の不正入試は2018年に発覚。その後、他の大学でも相次いで不正が明らかになるなど一連の問題の発端となった。元受験生が起こした集団訴訟の判決は、順天堂大に賠償を命じた5月の同地裁判決(確定)に続き、2件目。
この日の判決は、東京医科大が06~18年の医学部医学科の一般入試などで、女性や一部の男性が不利になる得点調整を行っていたと認定。同大は調整の事実を公表しておらず、知っていれば原告らが同大を受験することはなかったとして、「自らの意思によって受験校を選択する自由を侵害した」と指摘した。
その上で、「他の大学を受験する機会が失われ、進路の決定に影響を及ぼした」と述べ、1年度分の受験ごとに1人当たり20万円の慰謝料を支払うよう命じ、受験に伴う交通費や宿泊費なども損害と認定した。
さらに、得点調整がなければ合格していたり、その可能性があったりした元受験生4人については、より大きな精神的苦痛を受けたとして1人当たり100万~150万円の慰謝料を上乗せした。
一方、元受験生1人については請求を棄却。原告弁護団によると、受験の事実が認められなかったという。
この訴訟では19年以降、女性40人が同地裁に提訴し、このうち12人は同大との和解が成立するなどしていた。
判決後、同大を不合格となり、別の大学を経て医師になった原告の長谷川麻矢さん(45)が東京都内で記者会見し、「女性を不当に扱って1人20万円の慰謝料で許されるのかと考えると、適正な額ではない」と話した。東京医科大は「判決内容を精査して対応を検討する」とのコメントを出した。