カンボジア拠点詐欺、「海外匿流」指示役は中国人夫婦…現地と日本往来し「かけ子」案内や日本語通訳か
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カンボジアを拠点とする特殊詐欺事件に関与したとして、愛知県警が指示役の中国人夫婦を組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕した。特殊詐欺やSNS型投資詐欺は東南アジアの拠点から実行されるものが目立つが、指示役の摘発は極めて異例だ。警察当局は海外で活動する「匿名・流動型犯罪グループ(
摘発逃れ埼玉へ
7日に逮捕されたのは、埼玉県川口市の職業不詳の男(33)と妻(22)の両容疑者。カンボジア北西部ポイペトの集合住宅を拠点に、特殊詐欺に関わったとして強制送還され、愛知県警に逮捕された日本人29人の現場管理役とみられている。
捜査関係者によると、拠点の指示役はこの夫婦ら8人ほどの中国人だった。29人は監視下で、警察官を装う「ニセ警察詐欺」の「かけ子」として日本向けに詐欺電話をかけていた。
カンボジア国家警察は5月27日、拠点を急襲して29人を拘束したが、この夫婦は摘発を逃れ、2日後に日本へ。川口市の戸建て住宅で暮らし、東南アジアと日本を複数回行き来していたという。妻は都内の大学に在籍していたという情報もある。警察は今月7日、カンボジアに出国しようとしていた男を千葉・成田空港で取り押さえた。
日本人を管理
「中国の犯罪組織が日本の国内外にネットワークを張り、拠点で詐欺電話をかける日本人を管理している」。愛知県警の幹部は、事件の構図をそう説明する。
この夫婦は、かけ子に特殊詐欺のノルマを課していたほか、別の中国人の指示役との日本語通訳もしていた。かけ子を日本から現地に案内する役割もあったとみられている。
帰国したかけ子の一部は、「(拠点の)中でのことを話せば『家族に危害が及ぶ』と脅されていた」と供述した。警察当局は、この夫婦の上役のほか、日本人を勧誘する「リクルーター」など、国内外に共犯者がいるとみている。
国際連携強化
近年、日本向けの特殊詐欺は東南アジアに拠点を置く流れが定着している。警察当局は昨年までの6年間にタイ、フィリピン、カンボジア、ベトナムを拠点とした詐欺に関与したとされる計178人を摘発した。
米国議会の諮問機関「米中経済安全保障検討委員会」は今年7月、中国の犯罪組織が東南アジア全域で「詐欺センター」を運営し、世界各国の被害額は年間数百億ドル(数兆円)に上るとの推計を公表した。
生成AI(人工知能)が会話形式で自動回答する「AIチャットボット」や翻訳ソフトなどを悪用し、詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)を繰り返しているとの分析を示している。
「実態解明は急務だ」。今月1日、匿流対策の新組織発足式で、警察庁の楠芳伸長官は力を込めた。警察当局は、海外の匿流について情報の集約・分析を進め、現地当局と連携して、詐欺拠点の摘発を進める。
「+」から始まる国際電話、特殊詐欺に悪用7割超
特殊詐欺に「+」から始まる国際電話を悪用する手口は急増している。
警察庁によると、今年上半期(1~6月)は4万7005件と、前年同期の約2・5倍に達した。特殊詐欺に使われた電話番号の実に7割超に上る。警察官を装って電話をかけ、LINEのビデオ通話に誘導する「ニセ警察詐欺」などでは若者も標的にされている。
警察庁は、国際電話を使わない人に対し、「みんなでとめよう!!国際電話詐欺(みんとめ)」を合言葉に、国際電話のサービスの利用を休止するよう呼びかける活動を展開している。
固定電話の場合は、国際電話不取扱受付センター(0120・210・364)に申し込めば休止できる。スマートフォンの場合は、国際電話の着信を規制するアプリの利用が有効だ。警察幹部は「国民が詐欺電話を受ける頻度を減らす取り組みを進める」と話す。