[時代の証言者]アニメで描く物語 富野由悠季<5>手塚治虫との出会い 

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 小学校高学年から中学時代に読んだ手塚治虫先生の作品の記憶について、お話しします。「鉄腕アトム」と、「ロストワールド」「メトロポリス」「 きた るべき世界」の初期SF3部作は、作劇手法を教えてくれた決定的な作品でした。

 《1946年(昭和21年)にデビューした手塚治虫は次々に話題作を発表し、10万馬力のロボット少年・アトムが活躍する「鉄腕アトム」の連載が52年(同27年)に雑誌「少年」でスタートする》

 小学校5年生のときに、「少年」に掲載されたアトムの第1回を読んで、定期購読を始めました。それまで小学館系のものしか買ってくれなかった親に、何としても「少年」にしてくれと頼みこんだんです。アトムの都会性と近未来性には舌を巻きました。

 僕の住んでいた地区にはなかった貸本屋のために、隣町まで行かなければならなかったんですが、そこでは漫画がそれなりに並んでいた。その棚に「来るべき世界」を見つけました。小学6年生の頃だったと思います。

 《「来るべき世界」は51年(同26年)に発表された。長年の原爆実験のために生物相が変化した地球を舞台に、フウムーンという未知の生物と、国家間戦争を描いた物語だ。朝鮮戦争、米国とソ連による冷戦など、当時の世界状況へ向けた皮肉と反戦のメッセージが込められている》

 上下巻の漫画で、2晩借りて15円ぐらいだったと思います。内容は未来の話なんですが、冷戦の話をベースにしていながら、なおかつ、地球を丸ごと舞台にし、ラストシーンでは破滅寸前になった世界の救済を描いていました。スター国とウラン連邦という国の対立の間に東京を置いて、そして、高速で移動できるような乗り物があり、漫画で物語を作っているんだと感じました。リアルとフィクションが融合していて、人間関係も巧妙で、日本の漫画というのはここまでできるんだと思いましたね。

 そして一番衝撃的だったのは、男と女の恋愛感情を描いていたことでした。漫画でこれをやるかというのを教えてもらったんです。

 具体的に記憶しているのは、作中に登場する女の子のキャラクター「ポポーニャ」を見て、初めて性的興奮を覚えたことです。黒い覆面を外した瞬間に、女だったことがわかるというギャップにやられました。物語というのは、絵面の問題ではないと感じたのです。登場した女性が、物語の場面に合わせて、エロチックに見えることがある。ギャップと興奮がリンクしたというのは何なんだろうと、その後ずっと考えていました。

 ポポーニャって名前、もう絶対に忘れないですね。(アニメーション映画監督)

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7185601 0 時代の証言者 2025/10/08 05:00:00 2025/10/08 05:00:00
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