脳死肝移植、3大学病院で2年半ゼロ…一部施設に臓器受け入れ要請が集中し断念のケースも
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脳死者から提供された肝臓の移植を担う全国23施設のうち3施設が2023年から2年半余りで一度も移植を実施していないことが、読売新聞の調べで分かった。臓器提供が増える中、移植が集中する施設がある一方で長期で実績のない施設があることが浮き彫りとなった。こうした施設は手術の質の担保が懸念されるとして、厚生労働省が移植施設を認定する基準について見直しを検討している。
移植施設は、必要な医師数や難度の高い手術の実績などの基準に沿って臓器ごとに関連学会が審査し、日本医学会の委員会が認定している。臓器あっせん機関・日本臓器移植ネットワークによると、23年1月~25年8月に315件の肝臓移植が実施された。
読売新聞が内訳を分析したところ、東京女子医、三重、熊本の3大学病院で移植の実施はなかった。理由について、三重大は「(移植に)該当するケースがなかった」、東京女子医大は「数年前から肝臓移植を停止している」と説明し、熊本大は「回答を差し控える」とした。移植を待つ患者については、他の大学病院に移すなどして、いずれも影響はなかったとしている。
一方、同じ期間で肝臓移植を最も多く手がけていたのは東京大の70件で、京都大が38件、九州大が36件で続き、上位5施設で196件と全体の6割を占めた。一部の施設では臓器の受け入れ要請が集中し、体制が間に合わず、受け入れを断念する事態も生じている。
移植医療に詳しい慶応大の伊藤由希子教授(医療経済学)は「移植の実施が難しい施設で患者が移植を希望した場合、他の施設を探す必要が生じて、移植のチャンスを逃す恐れがある。国は施設認定を学会任せにせず、実績に応じて見直せるよう主体的に関わるべきだ」と指摘する。