戸籍上の性別変更、外観要件は「違憲・無効」…札幌家裁「当事者があえて混乱招く行動は考えにくい」
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性同一性障害の人が戸籍上の性別を変える際、手術やホルモン療法で性器の外観を変更するよう求めた性同一性障害特例法の規定(外観要件)が憲法に反するかが問われた2件の家事審判があり、札幌家裁(佐野義孝裁判長)は規定を「違憲・無効」と判断し、当事者2人の性別変更を認める決定をしたことが分かった。決定はいずれも19日付。外観要件を違憲とした司法判断が明らかになるのは初めて。
審判を申し立てたのは、戸籍上の性別と性自認が異なる北海道内の男女2人。それぞれアレルギーや副作用の懸念などからホルモン療法が受けられないため、外観要件を違憲・無効とするよう求めていた。
2件の決定は外観要件について、「性器が他者の目に触れる公衆浴場などでの混乱を避ける目的と解されるが、当事者があえて混乱を招くような行動に出ることは考えにくい」と指摘。さらに性同一性障害の治療の観点からも、現在の医学的知見に基づくと外観要件を課すことは合理的ではないとした。その上で外観要件を「身体の侵襲を受けない自由」の過剰な制約に当たるとし、「個人の尊厳」などを保障した憲法13条違反だと結論づけた。
特例法の性別変更の要件を巡っては、最高裁大法廷が2023年、手術による生殖能力の喪失を求めた規定(生殖不能要件)を違憲・無効と判断。今回の決定は、さらに外観要件も不要としており、健康上の理由などで性器の手術やホルモン療法を受けられない当事者の救済につながる可能性がある。