大阪の老人ホーム職員を入所者が殺害、「介護職場の安全」遺族訴え…運営会社へ賠償請求訴訟25日判決

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 大阪市平野区の老人ホームで4年前、女性職員が入所者の男に殺害される事件があり、安全対策を怠ったとして、遺族が施設の運営会社に慰謝料など約3950万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁で言い渡される。遺族が取材に応じ、「介護職員が安心して働ける環境のあり方を考えるきっかけになれば」と語った。(小松大騎)

榊真希子さん=遺族提供
榊真希子さん=遺族提供

 女性は榊真希子さん(当時68歳)。約30年前から介護ヘルパーとして働き、2017年からこの老人ホームで勤務していた。入所者と話すのが大好きで、「(入所者から)女神って呼ばれたのよ」と喜んでいたという。

 榊さんの長女(39)は「母自身が高齢で、介護の仕事は体力的にきつかったはずだが、とても楽しそうだった」と振り返る。

 大阪府警の発表によると、事件は21年11月16日午後10時半頃に発生。男(当時72歳)は施設1階の事務所で榊さんの頭を金づちで殴って殺害した。男は直後に7階から飛び降りて死亡した。

 長女は事件後、府警から「榊さんと男にトラブルはなかった」と説明を受けた。男の動機は不明だが、事件前にも入所者らに暴力をふるっていたとも聞いた。「事件は防げたのではないか」。施設側に不信感が募り、23年2月に提訴した。

 訴状によると、榊さんは事件当日の午後10時以降、約40人の入所者がいる施設で、一人で夜勤業務に当たっていた。

 長女側は訴訟で、事件の約2週間前に男が椅子を蹴り飛ばして職員にぶつけ、3日前には別の入所者を殴ったり、蹴ったりしていたと主張。「事件は予見可能で、一時的にでも職員を増やし、監視体制を強化する必要があった」と施設側の安全配慮義務違反を訴えた。施設側は事件前の男の暴力行為について認めた上で、「男の犯行までは予見できず、賠償責任はない」と反論している。

 長女は判決を前に「介護現場では誰もが暴力行為の被害者になり得る。理不尽に奪われた命があったことを知ってほしい」と話した。施設側の代理人弁護士は取材に「係争中なので回答を差し控える」としている。

「利用者から暴力」34%…人手不足 夜勤ワンオペ

  老人ホームなどの利用者による職員への暴力事案は少なくない。

 約9万人が加入する労働組合「日本介護クラフトユニオン」(東京)が昨年、組合員を対象に行った調査では、回答者1389人の34・9%(485人)が「利用者らから身体的暴力を受けた経験がある」とした。

 同ユニオンの村上久美子副会長は「男性を含む複数の職員での対応が望ましいが、慢性的な人手不足で夜勤帯はワンオペになりがち。力の弱い女性や高齢の職員も多い」と指摘する。厚生労働省によると、今年1月時点で要介護・要支援認定者数は約720万人。2040年には約990万人と推計されており、施設側の職員不足が深刻化する可能性がある。

 淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「ルールを逸脱した入所者について、施設側は積極的に行政や警察に連絡し、施設内の安全を確保する必要がある」と指摘する。

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