みちのく記念病院の遺体確認しない「みとり医」、新たに1人判明…認知症疑いだった別の医師を県が異例の告発

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 患者間殺人 隠蔽いんぺい 事件が起きた青森県八戸市のみちのく記念病院で、夜間や休日に遺体を診察せずに死亡診断書を作成する高齢医師が新たに1人判明した。同病院職員などへの取材でわかった。事件捜査の過程などで判明済みの2人と合わせ、3人となる。いずれも院内で「みとり医」と呼ばれ、認知症の症状がある医師もいた。3人は遅くとも2010年代以降に順次、みとり医として活動しており、県警は遺体を確認しない診断が常態化していたとみている。

みちのく記念病院(2月15日、青森県八戸市で、読売機から)
みちのく記念病院(2月15日、青森県八戸市で、読売機から)

 3人のうち2人は死亡しており、県が存命の1人を医師法違反(無診察治療)の疑いで県警に告発したこともわかった。自治体による医師の告発は異例だ。

【一覧】みちのく記念病院の「みとり医」
【一覧】みちのく記念病院の「みとり医」

 新たにみとり医と判明したのは、3人の中で最古参の男性医師。看護師に車いすで移動させてもらうなど介護が必要な状態にもかかわらず、90歳を超えても勤務医に名を連ねていた。

 職員らの証言では、最古参の医師は21年5月、90歳代半ばで病院内の一室で死亡した。少なくとも死亡する約3年前から、みとり医の役割を担っていたという。

 職員の一人は「死ぬ直前までみとり医として扱われていた。医師の仕事なんてできるはずがないのに」と語る。

 隠蔽事件は23年3月にあり、認知症の疑いなどで同病院に入院していた男性医師(当時89歳、すでに死亡)が、殺害された被害者の死因を「肺炎」とする虚偽の診断書を作成していた。この医師は捜査の過程で、みとり医だったことがわかっている。

 告発されたのは、別の80歳代の男性医師。青森県と八戸市による今年2~5月の臨時立ち入り検査で、みとり医の役割を担っていたことが判明している。

 関係者によると、告発された医師は2月頃、死亡した入院患者の遺体を診ずに複数の死亡診断書を作成した疑いが持たれている。医師法20条は、医師が診察せずに治療する行為を無診察治療として禁じている。遺体を診ずに診断書を書いた場合も対象となる。

 同病院職員らによると、告発された医師は病院敷地内の医師住宅に住んでおり、認知症の症状があった。自身の氏名を思い出せず、看護師から言われるままに死亡診断書を書き、看護師が後ろから手を取って署名させることもあった。

入院後も「みとり医」続ける

 みちのく記念病院は、医師住宅が近接していることを理由に県から当直医の配置を免除されていた。夜間や休日の患者対応では、医師が駆けつけることになっていた。しかし、患者が死亡した際の対応を任されていたのは、みとり医だった。

 隠蔽事件に登場する医師は、告発された医師の前任だ。内部資料によると、2012年頃から同病院で働き、80歳を超えた19年頃から夜間などの死亡診断を担当するようになった。

 同病院近くのアパートで暮らしていたが、意識障害などの症状が表れる「ウェルニッケ脳症疑い」と診断された。22年12月、認知症の症状もあり、同病院に入院した。23年に転院するまでみとり医を続け、24年に死亡している。

 読売新聞が入手した看護師の業務用メモでは、夜間に入院中の患者が死亡した際の対応として「診断書、紙カルテは○○ドクターの所に持っていって書いてもらう」とある。「○○」には、事件に登場する医師の実名が記されている。

 同病院職員によると、事件当時の院長で殺人を隠蔽したとして犯人隠避罪で起訴された石山隆被告(62)は、看護師に指示し、事件に登場する医師に死因を偽った診断書を書かせていた。

 捜査関係者によれば、石山被告は事件に登場する医師について「医師として働かせている」と県警に説明した。しかし、この医師の長男は読売新聞の取材に「入院後、父に給料は払われていなかった」と証言している。

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