職員20人に1人が不当圧力「受けた」、それでも記録なし…福井市「働きかけ記録制度」形骸化

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 議員や市民ら外部からの不当な圧力を抑えるため、市職員への要望や相談でのやりとりを記録する「働きかけ記録制度」を設ける福井市で、過去10年間の実績がわずか4件にとどまったことが、市への取材でわかった。元副市長による地方公務員法違反事件を受け、今夏、職員に実施されたアンケートでは、議員から不当な働きかけを受けたとの証言があったが、記録には残されておらず、制度の形骸化が指摘されている。(佐藤圭史)

福井市役所
福井市役所

 同市では、元副市長が福祉部長だった2022年6月、元市幹部の男からの要請を受け、介護保険事業の公募に応じた事業者の非公開リストを撮影し、LINEで送信。職務上知り得た秘密を漏らしたとして、地方公務員法(守秘義務)違反の罪で略式命令を受けた。元副市長は、事件に関する市特別職職員等倫理委員会の調査に「先輩からの要請を断り切れなかった」と話したが、働きかけの記録はなかった。

【グラフ】福井市の働きかけ記録制度の実績
【グラフ】福井市の働きかけ記録制度の実績

 これを受け倫理委は7月、市職員400人を対象に働きかけに関するアンケートを実施。「過去5年以内に明らかに不当と思われる働きかけを受けた」と答えた職員は20人に1人に上った。「議員から要望通り対応するよう言われた」「議員から補助対象にならなかったものを対象にするよう言われた」など、市議からとみられる働きかけが目立った。

 市の働きかけ記録制度は2003年、市幹部が、市議会の一部会派が飲食代を負担する宴会に出席したことが問題視されたのを機に制定された。記録対象は、原則、すべての議員からの働きかけと、市民らからによる不当と思われる働きかけとした。

 市への取材によると、制定初年度の03年度は59件、04年度は29件の記録があったが、15年度以降はほぼゼロに。過去10年間の4件はすべて市議からで、案内板の設置や国保税滞納者への対応改善を求めるものだった。しかし市幹部は「アンケート結果を踏まえれば、働きかけはもっとあったはずだ」とする。

 働きかけ記録制度に関する調査を定期的に実施する全国市民オンブズマン連絡会議(名古屋市)によると、21年の調査で記録制度があるとしたのは、47都道府県のうち32、20政令市のうち19、62中核市のうち37と、いずれも半数を超える。しかし、20年度の記録件数がゼロだった自治体が全体の約7割に上った。

 福井市と同様に、議員からの働きかけは原則、すべて記録する自治体のうち、過去5年の記録実績がなかった自治体の一つ、大阪府豊中市は「制度に基づいた要望や相談はない」と説明。同様の岡山県は「議員からの要望や意見は公の場でなされており、(記録が)0件なのは、公正な県行政が執行されているためだ」とし、いずれも必要な記録がされていなかったという認識はないという。

  同志社大の真山達志教授(行政学)の話 「現場では不当かどうかの判断は難しく、議員からの働きかけはすべて記録するのが望ましい。運用する組織や職員の意識次第で、制度は骨抜きにされてしまう。市民が情報公開を求め、働きかけの内容や回数を監視していく必要がある」

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