狙われた「フルーツ王国」福岡県うきは市で大量盗難相次ぐ…旬の梨6200個被害、8月の収入はゼロ
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収穫を控えた果物の盗難被害が相次いでいる。梨6200個、イチジク1000個――。「フルーツ王国」として知られる福岡県うきは市では今夏、大量の果物が盗まれる被害が起きた。旬の果物を狙われており、農家と産地を守るため、地元の警察と行政、JAがタッグを組み、防犯カメラ設置などの対策強化に乗り出している。(柳原正和、相良悠奨)
贈答用「幸水」狙われ給与払えず
「愛情を込めて育てた梨を盗むなんて、許せない」。同市浮羽町の梨園で農業生産法人「80ファーム」社長の佐々木浩喜さん(54)が沈痛な表情で語った。
佐々木さんによると、運営する梨園で7月中旬、収穫時期を迎えていた梨が全てなくなっているのに、様子を見に訪れた父親が気づいた。梨は地面に落ちるなどしておらず、盗まれたのは明白。「幸水」約7500個が盗まれたとして警察に被害届を出した。その後の捜査で、約6200個が盗まれていたことが確認され、被害額は約190万円に上るという。
お中元シーズンで、高騰していた贈答用の旬の幸水だけが狙われた。8月の法人収入はゼロになり、給与が払えず、従業員6人全員が合意退職した。佐々木さんは「悔しさしかない」と吐露する。
福岡県警うきは署によると、管内の同市と隣接する同県久留米市田主丸町では昨年、キウイ約1万個(約100万円相当)、柿約500キロ(約15万円相当)など6件の被害があり、被害総額は計約257万円に上った。今年も同法人の被害のほかに、8月に田主丸町でイチジク約1000個(約15万円相当)が盗まれた。
果物栽培に適した土壌と気候に恵まれるうきは市では、ブドウや桃、柿、イチゴなどの果物が年間を通じて収穫される。同市で2023年に生産された果実の総売上高は農産品全体の5割超を占める約43億円に上り、市内には収穫体験ができる果物の観光農園も多く、同市は「フルーツ王国」としての存在感を高めている。
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