スリランカに円借款で整備した送電線網が完工…中国からの巨額融資で「債務のわな」に
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【コロンボ=井戸田崇志】国際協力機構(JICA)は3日、スリランカ中部ハバラナで、円借款で整備された送電線網の完工式を開いた。日本政府が2024年7月に経済危機に陥ったスリランカへの円借款を再開して以降、工事が完了した円借款事業は初めて。
スリランカは22年に事実上のデフォルト(債務不履行)を宣言し、日本は円借款を停止した。スリランカで進められていた計11件の円借款事業の工事の大半が中断した。24年6月に日本主導の債務再編協議でスリランカが債権国と最終合意したことを受け、円借款を再開した。
完成した送電線網は、スリランカ中部と西部の最大都市コロンボ近郊間の146キロ・メートルを結び、変電所も整備した。12年に事業計画を決め、当初は17年に完成予定だったが、経済危機やデフォルトの影響で大幅にずれ込んだ。
事業には三菱商事などが参画し、総事業費は113億円。スリランカのエネルギー相、クマーラ・ジャヤコディ氏は完工式で「電力供給の安定性が向上する。日本の協力に感謝したい」と述べた。
日本は同国への債権を約3700億円保有する。デフォルトで円借款事業に関わる日本企業などに未収金121億円が生じたが、現在はほぼ解消したという。
ただ、スリランカ経済の先行きへの懸念から日本企業が撤退したケースがあり、本格的に再開していない円借款事業もある。JICAはコロンボに近いバンダラナイケ国際空港の拡張工事に参画する企業を募る再入札を行っており、円借款事業を巡る課題は残る。
スリランカは、安全保障上の利益を得ようとする中国から巨額融資を受けて返済不能となり、「債務のわな」に陥ったとされる。海上交通路の要衝に位置するため、地政学的にスリランカを重視する日本は強引な海洋進出を続ける中国へのけん制を念頭に支援を主導する構えだ。