「AI脚本」を人気声優が朗読…銘打ったイベントは中止、「盗作」と批判相次ぎ
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専門家「権利者に配慮を」
「AI脚本」を、人気声優が朗読する――。そう銘打ったイベントが3月、中止に追い込まれる事態が起きた。生成AI(人工知能)が脚本などの著作物を無断学習している可能性を踏まえ、「盗作脚本ではないか」「声優を応援できない」などの批判が相次いだためだ。専門家は「AIを使ったイベントでは権利者への配慮が必要だ」としている。
たたき台
中止になったのは、東京都内のイベント企画会社が計画した「~AI朗読劇シリーズ~ 『AIラブコメ』」。「予想を凌駕する朗読劇 声優 VS AI脚本」とうたい、生成AIに恋愛ドラマの脚本を作らせて、声優が都内の劇場で朗読するというものだった。
声優陣には、人気アニメ「鬼滅の刃」や「BLEACH」などに出演経験がある男女19人をそろえ、3月13~20日に予定されていた。
同社によると、脚本は、業務委託したクリエイターが、有料で契約したチャットGPTなどの生成AIにアイデア出しを指示し、生成AIが作り出したものをたたき台にして、作成したという。既存の著作物と類似していないか複数で確認したとしている。
劇場では、脚本の内容や話の流れに不自然な点があっても声優がそのまま読み上げて、終了後のトークセッションで、どの部分がAIで作られたものか種明かしする予定だったという。
無断学習
生成AIは、インターネット上の膨大な情報を機械的に学習し、精度を上げている。著作権法30条の4は、著作権者の利益を不当に害する場合を除き、AIが脚本などの著作物を無断学習することを認めているが、権利者団体などからは「ただ乗りだ」などと批判の声が出ている。
同社が3月4日以降、SNSで「AIが書いた脚本を声優が演じる!」などとイベントの概要を発表すると批判が殺到。「無断学習がまかり通っている今、盗作脚本と変わらないのではないか」といった声や、生成AIを利用したイベントに声優が参加することで「声優さんの声を(AIに)学習されても何も文句言えなくなる」などの声が多く上がった。
同社に対しても、「出演する声優は応援しない」「中止にすべきだ」といった批判的な意見が500件ほど届き、イベントが始まる4日前の同月9日に中止を発表した。
同月6日から販売していたチケットは全額返金予定だといい、中止による損失額は1000万円に上るという。同社は取材に対し「エンタメの新しい可能性の一つとして生成AIを使ったが、説明不足な点があった。出演者の声優に迷惑がかかる危険があり、断腸の思いで中止の判断をした」としている。
法改正求める声
AIによる著作物の無断学習について、「日本シナリオ作家協会」(東京)と「日本脚本家連盟」(同)は昨年11月、「脚本家のみならず全ての創作者にとって著しく不公平」とする共同声明を発表し、法改正を求めた。
文化庁の文化審議会著作権分科会の小委員会は今年3月、権利侵害になりうるケースを例示。似た文章や絵を出力させる目的で特定の作品を集中的に学習させる行為などを挙げた。
日本シナリオ作家協会の担当者は小委員会の例示について「著作権侵害のケースがなお明確には示されていない」とした上で、「脚本家はAIに創作物を学習される側にも、AIを使って創作物を作る側にもなり得る。グレーゾーンが大きいと、今後も、AIを使ったことが理由で作品の発表が中止になる事態が起こる可能性がある」として、更なる法整備が必要と訴える。
AIと著作権法の関係に詳しい出井