北九州の中3殺傷、平原容疑者の鑑定留置延長し通算8か月に…重大事件で目立つ長期化
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北九州市で昨年12月、中学3年の男女が殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された無職平原政徳容疑者(44)の2度目の鑑定留置について、福岡地検小倉支部は26日、今月29日までの期限をさらに18日間延長すると発表した。期間は通算約8か月に上る見通し。捜査段階で行われる容疑者らの精神状態などを調べる鑑定留置を巡っては、長期化するケースが目立つ。刑事責任能力の有無や程度を判断するために丁寧な鑑定が求められるが、懸念の声もある。(相良悠奨、藤本鷹史)
■異例の再鑑定
精神疾患が動機や事件に影響を与えたのか、与えたとすればどのようなものだったのか――。平原容疑者の鑑定留置は1月中旬から続いている。捜査関係者らによると、平原容疑者には、精神疾患があり、事件前には自宅で爆竹を鳴らしたり、軍歌を大音量で流したりする姿が見られていた。一方、事件後はごみ出しなどを除き、自宅を出ておらず、福岡県警は捜査を警戒していたとみている。
最初の鑑定は延長を含め4月まで行われたが、その後、別の医師による異例の再鑑定に入り、2度の延長を経て9月16日までの予定。関係者によると、再鑑定を行うことになったのは、最初の鑑定結果に容疑者の精神状態が事件に与えた影響などについて具体的な記述が乏しかったからだという。ある検察幹部は「鑑定内容に不満だったからではない」と強調する。
■見極め難しく
鑑定留置は2~3か月程度が多いが、上限が定められているわけではない。重大事件での長期化傾向が目立ち、2022年に起きた安倍晋三・元首相が銃撃された事件では5か月半、36人が犠牲となった19年の京都アニメーション放火殺人事件では6か月に及んだ。
東京科学大の安藤久美子准教授(司法精神医学)によると、鑑定では、精神科医らが段ボール数箱になることもある捜査資料を読み込み、容疑者の生い立ちや事件当時の状況を確認。容疑者とも面談するなどし、家族らへの聞き取りも行う。
精神科医としての通常業務と並行して行うことが多く、鑑定中に精神疾患の症状や供述が変遷した場合は鑑定結果が変わる場合もある。精神疾患が事件に与えた影響の見極めは難しく、安藤准教授は「重大事件ほど世間の注目度も高いので、鑑定医も慎重を期して、時間をかけて実施しているのだろう」とみる。
■公判見据え?
起訴前の鑑定留置は05~08年は200件前後だったが、裁判員裁判が始まった09年頃から急増。10年以降は年間400件以上で推移する。以前の起訴前の鑑定は、1~2時間程度の面接による簡易鑑定で、起訴後に弁護人が責任能力を争う場合に正式鑑定を求める場合が多かった。近年は精神疾患の詳細な症状などが公判で争われるケースも目立っており、公判を見据えて長期化しているとみられる。
鑑定留置を巡っては、弁護側が、期間などに不服を申し立てるケースもある。安倍元首相銃撃事件では、検察側の求めで決まった延長が弁護側の不服申し立てを経て短縮されたり、取り消されたりした。日本弁護士連合会刑事弁護センターの田岡直博委員長は「身柄拘束の長期化や裁判の遅延につながりかねず、特別な理由なしに安易に長期間実施したり、医師を変えて鑑定を繰り返したりすることは許されない。必要限度内であるべきだ」と指摘する。
元裁判官の水野智幸・法政大教授(刑事法)は「鑑定内容が複雑化したり、鑑定医が目を通さないといけない証拠が膨大に増えていたりして長期化しているのではないか。重い量刑も予想される事件で慎重になり期間が長くなるのはやむを得ない面もある」としている。
◆鑑定留置 =容疑者や被告を医療機関などに一定期間移し、医師が面接や知能検査、脳の画像診断などで精神鑑定を行う手続き。鑑定結果などに基づき、捜査段階では、検察が刑事責任能力について判断。責任能力がないと判断すれば、不起訴となる。起訴された場合は、裁判所が責任能力の有無や程度を見極める。