九州大発宇宙ベンチャー「QPS研究所」創業者、死後に時価40億円分の同社株を大学に寄贈へ
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九州大発の宇宙ベンチャー「QPS研究所」(福岡市中央区)創業者で、九大名誉教授の八坂哲雄さん(83)が、自身の死後に同社の株式200万株(時価約40億円)を寄付する契約を九大と締結した。
八坂さんは富山県出身で、1970年に東京大大学院を修了し、工学博士号を取得した。東大宇宙航空研究所(現・宇宙科学研究所)でロケット、日本電信電話公社(現・NTT)で通信衛星の開発を手がけ、94年からは九大工学部教授として、小型衛星や宇宙ごみなどの研究を進めた。
退官後の2005年、三菱重工業の元ロケット開発者らとQPS研究所を設立。現在の社長を務める大西俊輔さん(39)も九大出身だ。
同社は22年、宇宙開発や宇宙利用に貢献した企業や個人などを表彰する「宇宙開発利用大賞」(内閣府主催)で最優秀の内閣総理大臣賞を受賞した。八坂さんは経営を退いた後も、夜間や天候不良時の撮影に優れる小型衛星の開発に助言するなど成長を支える。
寄付契約は、「少しでも恩返しがしたい」と八坂さんから働きかけて実現した。九大は安定株主として株を長期保有する考えで、配当金は研究環境の整備などに充てる。
7日に九大伊都キャンパス(福岡市西区)で行われた契約後の記者会見では、石橋達朗学長が「寄付を活用し、未来を担う学生らに思う存分研究してもらいたい」と述べた。八坂さんは「社会貢献につながる仕事を続け、今後も地元で発展を続けてほしい。次世代が生み出す新たな技術に期待したい」と笑顔を見せた。