共同船舶・所英樹社長インタビュー 新たな鯨肉製品の展開も
2025年8月22日
捕鯨母船・関鯨丸の竣工とナガスクジラが捕獲対象種に加わり、1年が経過した。母船式捕鯨を行う共同船舶(株)の所英樹社長に今年の操業状況や課題などを聞いた。
国内唯一の母船式捕鯨を行う共同船舶(株)の所英樹社長に、今期の操業状況や販売などについて話を聞いた。
――今期の操業状況はいかがでしょうか。
所社長 今期は4回の操業を予定しており、4月に1回目の操業を開始した。初の試みとして、オホーツク海操業を実施。予定のナガスクジラ25頭を捕獲した。ただ、餌の関係からか、かなり痩せた個体が目立ち、見込みでは一頭平均20トンの計算だったが、重量換算では当初の目標の6割程度しか生産できなかった。6月から2回目の操業を開始し、ニタリクジラの操業を見込んだが、当初予定した海域にニタリがおらず、この種は比較的暖かい海域に生息するクジラなので南下した。こちらも予定の6割程度の生産にとどまった。そのため今期トータルの生産量は予定の8割程度とみており、赤肉の供給に不足感が出る可能性がある。
昨今、海洋環境が目まぐるしく変化しているため、操業も手探りの状況だ。こういう時こそ、ITを駆使してより効率的な操業が行えるような体制を整えるべきだ。弊社では過日の総会で大手通信会社にいた谷川拓司氏にデジタル・AI担当として非常勤取締役に就いていただいた。社内のIT化をはじめ、さまざまな点でデジタル化を進めていきたい。
――昨年、ナガスクジラが捕鯨対象鯨種に加わりました。
所社長 ナガスは「クジラの王様」ともいわれており、上品な味わいで赤身はとろけるようなおいしさだ。従来の鯨肉とは比べものにならないおいしさがある。
初操業となったオホーツク産のナガスの生肉を札幌市場や仙台市場など全国6か所に上場したが、いずれも記録的な高値を付けていただいた。
特に捕鯨基地もある北海道でナガスの人気が出てきている。札幌市場で上場した際は買えない買参人も出たため、11月下旬に再度、ナガスを上場する計画だ。
また、機能性の観点からクジラに含まれる抗疲労成分などを含むバレニンを訴求してきたが、こちらもようやく軌道に乗りつつあり、ナガスを原料にしたバレニンの製造試験を行っているところだ。
――販売面はいかがでしょうか。
所社長 前期にかなりの数量を販売したこともあり、今期は目標の売り上げ達成は難しいとみているが、営業力を強化することで売り上げ24億円を目指している。
新規の顧客を獲得しながら、新たな鯨肉製品を展開していきたい。昨年始めた寿司種「鯨のエンガワ」も作れば売れる状態でグルメ寿司にも導入され始めている。
ただ、流通をはじめ日本国内でも、まだ捕鯨に対するネガティブな感情や対応はなくなっていない。多くの人に正しい情報が浸透するよう広報活動にも力を入れていく。
クジラが増えれば当然アニサキスも増える。
ちなみに、鯨肉を刺身で食べたいけれどアニサキスが怖いと言う人もいるが、クジラの場合、アニサキスが消化器官以外で発見された事例はなく、生で食べてもアニサキス症を引き起こすことはないので安心してほしい。
また若返りについて、これまで線虫で効果が得られていたが、このたびヒトの試験でも若返り遺伝子といわれるサーチェイン遺伝子が発現し、老化防止効果への期待が高まっている。さらに鯨油の育毛効果についてもヒト試験で毛髪の本数の増加と太さが増すことが分かってきた。
「スーパーヘルシーフード・鯨肉が日本を救う」をキーワードに、さまざまな取り組みを行っていく。
国内唯一の母船式捕鯨を行う共同船舶(株)の所英樹社長に、今期の操業状況や販売などについて話を聞いた。
――今期の操業状況はいかがでしょうか。
所社長 今期は4回の操業を予定しており、4月に1回目の操業を開始した。初の試みとして、オホーツク海操業を実施。予定のナガスクジラ25頭を捕獲した。ただ、餌の関係からか、かなり痩せた個体が目立ち、見込みでは一頭平均20トンの計算だったが、重量換算では当初の目標の6割程度しか生産できなかった。6月から2回目の操業を開始し、ニタリクジラの操業を見込んだが、当初予定した海域にニタリがおらず、この種は比較的暖かい海域に生息するクジラなので南下した。こちらも予定の6割程度の生産にとどまった。そのため今期トータルの生産量は予定の8割程度とみており、赤肉の供給に不足感が出る可能性がある。
昨今、海洋環境が目まぐるしく変化しているため、操業も手探りの状況だ。こういう時こそ、ITを駆使してより効率的な操業が行えるような体制を整えるべきだ。弊社では過日の総会で大手通信会社にいた谷川拓司氏にデジタル・AI担当として非常勤取締役に就いていただいた。社内のIT化をはじめ、さまざまな点でデジタル化を進めていきたい。
――昨年、ナガスクジラが捕鯨対象鯨種に加わりました。
所社長 ナガスは「クジラの王様」ともいわれており、上品な味わいで赤身はとろけるようなおいしさだ。従来の鯨肉とは比べものにならないおいしさがある。
初操業となったオホーツク産のナガスの生肉を札幌市場や仙台市場など全国6か所に上場したが、いずれも記録的な高値を付けていただいた。
特に捕鯨基地もある北海道でナガスの人気が出てきている。札幌市場で上場した際は買えない買参人も出たため、11月下旬に再度、ナガスを上場する計画だ。
また、機能性の観点からクジラに含まれる抗疲労成分などを含むバレニンを訴求してきたが、こちらもようやく軌道に乗りつつあり、ナガスを原料にしたバレニンの製造試験を行っているところだ。
――販売面はいかがでしょうか。
所社長 前期にかなりの数量を販売したこともあり、今期は目標の売り上げ達成は難しいとみているが、営業力を強化することで売り上げ24億円を目指している。
新規の顧客を獲得しながら、新たな鯨肉製品を展開していきたい。昨年始めた寿司種「鯨のエンガワ」も作れば売れる状態でグルメ寿司にも導入され始めている。
ただ、流通をはじめ日本国内でも、まだ捕鯨に対するネガティブな感情や対応はなくなっていない。多くの人に正しい情報が浸透するよう広報活動にも力を入れていく。
クジラを食べてアニサキス対策
これまでもクジラの資源管理などを訴えてきたが、これらに加えて、今年はアニサキス対策をテーマに訴えていく。最近、アニサキスによる被害をよく耳にする。魚を生食した際、あたると激しい痛みや嘔(おう)吐に見舞われるのがアニサキス症。アニサキスはクジラやイルカなどの海産哺乳類を最終宿主にし、その消化器官で成熟し産卵。卵は排せつ物とともに海中に放出されることでアオキアミから魚やイカなどの体内で幼虫となる。日本は刺身や寿司などの生食文化があるので、その文化を守っていくためにも、資源管理を行いながら適度にクジラを利用していくことがとても大切だ。クジラが増えれば当然アニサキスも増える。
ちなみに、鯨肉を刺身で食べたいけれどアニサキスが怖いと言う人もいるが、クジラの場合、アニサキスが消化器官以外で発見された事例はなく、生で食べてもアニサキス症を引き起こすことはないので安心してほしい。
機能性で新たな知見も
野球やラグビーなど部活動を行う高校生を対象に、バレニンの効果のモニタリング調査を実施し、練習や試合後の状態について聞いたところ、疲労感や睡眠の質、集中力にポジティブな変化が表れた。また若返りについて、これまで線虫で効果が得られていたが、このたびヒトの試験でも若返り遺伝子といわれるサーチェイン遺伝子が発現し、老化防止効果への期待が高まっている。さらに鯨油の育毛効果についてもヒト試験で毛髪の本数の増加と太さが増すことが分かってきた。
「スーパーヘルシーフード・鯨肉が日本を救う」をキーワードに、さまざまな取り組みを行っていく。
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