国語世論調査 読書習慣の喪失は危機的だ
完了しました
「読書離れ」が急速に進んでいることを示す極めて深刻な数字である。スマートフォンに多くの時間を割く毎日でいいのか。社会全体で考えねばならない時期に来ている。
文化庁が2023年度の「国語に関する世論調査」の結果を公表した。5年に1度調べている「1か月に読む本の冊数」は、電子書籍も含めて「読まない」が過去最多の63%に上った。
08年度の調査開始以来、4割台で推移してきたが、今回急増する形となった。以前と比べて、「読書量が減っている」と回答した人も過去最多の69%に達した。理由は「情報機器で時間が取られる」が最も多かった。
文化庁は「スマホのアプリやSNSなどサービスの多様化」が背景にあると分析している。本の売り上げが好調だったコロナ禍の巣ごもり需要がなくなったことも、影響しているのだろう。
本を読むことは、新しい知識を得るだけでなく、登場人物に感情移入して喜怒哀楽を共にしたり、深く考えて内省したりすることで、人格形成にも大きな影響を及ぼす。一冊との出会いが、その後の人生を左右することもある。
本は読まなくても、SNSの投稿やインターネット記事は毎日読んでいる人が75%に上る。だが、SNSの刺激的な短文は、瞬間的な怒りの感情などに結びつきやすい。デジタルは紙に比べて、記憶に残りにくいとも言われる。
腰を据えて本と向き合い、じっくり考え、冷静に判断する。そうした時間を大事にしたい。
学校現場では「長い文章を読む忍耐力が低下している」といった声が聞かれる。しかし、このような傾向は、子供たちや若い世代ばかりではあるまい。
電車内や寝室で、ついついスマホを触ってしまうという人は多いはずだ。意識的にスマホから離れ、本を読むための時間を作らない限り、読書離れに歯止めをかけるのは難しいのではないか。
スマホは確かに便利だが、それ以外の時間をなくしてしまうような使い方は疑問だ。付き合い方を広く考える機会としたい。
全国各地で書店が減少している。地域に書店が一つもない「無書店自治体」は全体の4分の1に上る。国は、街の書店を守るプロジェクトをスタートさせた。
フランスや韓国でも、書店の活性化や本の売り上げ増につながる文化支援に取り組んでいる。読書は知の基盤である。大切な活字文化を守っていかねばならない。