前川彰司さん再審無罪、警察の供述誘導を認定「なりふり構わず供述得ようとした疑い濃厚」…検察も「不誠実で罪深い」と批判
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1986年に福井市で中学3年の女子生徒を刺殺したとして殺人罪で懲役7年が確定し、服役した前川彰司さん(60)の再審で、名古屋高裁金沢支部は18日、1審・福井地裁の無罪判決を支持して検察側の控訴を棄却し、「再審無罪」とする判決を言い渡した。増田啓祐裁判長は、警察が関係者供述を誘導し、検察が意図的に証拠を開示しなかったと認め、「刑事司法全体に対する信頼を揺るがしかねない」と述べた。
前川さんは87年に逮捕され、一貫して否認。地裁は無罪としたが、2審・高裁金沢支部は「事件後に血のついた前川さんを見た」とする知人6人の証言をもとに逆転有罪とし、最高裁で確定した。第1次再審請求は退けられ、2022年に始まった第2次再審請求で、同支部は昨年10月、再審開始決定を出し、確定した。
再審公判の争点は確定審と同様、6人の証言の信用性だった。
判決は、前川さんの事件への関与を最初に証言した知人が当時、別の事件で福井県警に逮捕されており、自身の量刑を軽減するため、虚偽の供述をしたと指摘。県警が捜査に行き詰まる中、この知人の供述に頼り、「他の関係者を誘導してなりふり構わず供述を得ようとした疑いが濃厚だ」と認定した。
さらに、県警がこの知人から供述を得るために勾留先での面会や飲食で優遇したとし、「不当な利益供与」と言及。別の知人が公判で証言した後、警察官が結婚祝いの名目で現金を渡したとも認め、「到底看過できない」と批判した。
一方、県警は1審公判中、現金を受け取った知人が事件の日に見ていたと述べたテレビ番組が、翌週の放送だったことを示す捜査報告書を作成し、福井地検の検察官も存在を把握していたが、第2次再審請求審まで開示しなかった。判決は「公益を代表する検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正」と批判した。
その上で「合理的な疑いを超える程度の立証がなく、犯人と認められない」と結論付けた。
判決言い渡し後、増田裁判長は前川さんに「長期間、ご苦労をかけ、申し訳なく思っています」と謝罪した。
名古屋高検の浜克彦次席検事は「判決を精査し、上級庁と協議の上、対応を検討したい」とコメントした。