参院選で各党の経済政策を分析、実質賃金を増やす具体策を問う
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参院選で与野党は、経済や社会保障、外交・安全保障など様々な分野の課題について独自の政策を掲げて論戦を繰り広げている。日本の現状を分析し、各党の公約を点検する。
続く物価高「経済の好循環」実現せず
国民は物価高に苦しんでいる。5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比で3・7%上がり、上昇率は3か月連続で拡大した。
日本は長らくデフレに悩んできたため、緩やかに物価が上昇すること自体は、必ずしも悪いことではない。日本銀行は、2%の物価上昇率を目指して金融緩和策を続けてきた。
ただ、それは物価上昇が企業の売り上げ増加と賃上げにつながり、消費が活性化して、さらに物価を押し上げるという経済の好循環を想定したものだ。現状はそうなっていない。
今年の春闘で大企業を中心に高水準の賃上げが実現したものの、物価上昇の影響を差し引いた実質賃金は4月も前年同月比でマイナスが続く。この状態が長引けば、国民は節約志向を強め、消費が失速してデフレに逆戻りしかねない。
物価高を一層深刻にしているのが、日本人の主食であるコメの高騰だろう。5月の消費者物価指数で、コメ類は前年同月と比べて2倍超と、記録的な上昇率になっている。大多数の国民の懐を直撃し、消費者心理を悪化させている。
加えて、米トランプ政権の関税政策が経済の懸念材料だ。米国との交渉は難航しており、米国に輸出する日本の自動車への高関税が続けば、裾野が広い基幹産業である自動車産業が打撃を受け、国内の賃上げ機運に水を差す恐れがある。
山積みの経済課題に、各党はどう対応するのか。
物価高対策の公約で、与党の自民、公明両党は現金給付を、野党各党は消費税の減税を掲げた。だが、バラマキ合戦の印象が強く、物価高を根本的に解決できるかどうかは不透明だ。
コメ政策では、自民が農家の経営を安定させる水田政策の見直しを訴え、立憲民主党は農業者への直接支払制度の創設を唱えた。価格引き下げのほか、食料安全保障の観点からも各党の対応に目をこらしたい。
物価高克服のカギとなるのは賃金の動向だ。自民は持続的な賃上げにより、2030年度に賃金約100万円増を目指すとした。立民は企業利益からの労働分配の増加や、最低賃金を早期に1500円以上とすることなどを掲げた。
選挙戦では、それらを実現する具体策を掘り下げる必要がある。トランプ関税への対処や打撃を受ける企業への支援策を含め、論議を深めてもらいたい。(編集委員 佐々木達也)