カビ毒一部で検査せず 随契米、スピード重視で 国が省略容認
農水省が定める「政府所有米穀の販売等業務仕様書」では、備蓄米を管理する受託事業体がカビの目視確認(メッシュチェック)と化学検査を実施するよう定められている。検査には一定の時間が要する。そのため供給を急ぐ随契米では、小売業者が自ら品質検査をすることを要件に、未検査で備蓄米を引き渡せるようにした。
ただ、同省が小売業者に課したのは「メッシュチェックと同等の品質確認」だけで、化学分析を求めていない。ある大手スーパーが品質への不安から独自に化学検査しているとする一方で、「目視や金属検査だけで、化学検査はせずに販売している」(大手コンビニ)とするケースが続出している。
同省によると、随契米を未検査のまま小売業者に引き渡したケースは少なくない。特に、大手小売りを対象に放出した直後で多く、「店頭に並べるまでのスピード感を重視していたため、未検査の状態で引き取った」(大手ドラッグストア)。
カビ毒に詳しい国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部の吉成知也第四室長によると、「メッシュチェックと化学検査の両方をするのが原則だが、メッシュチェックだけでもカビ汚染された米が出回るリスクは大きく下げられる」という。ただ、備蓄米のように長期保管された米でどの程度カビが発生するかのデータはまとまっておらず、「化学検査をした方が安心なのは間違いない」と指摘する。
目に見えない程度のカビなら健康被害を及ぼすほどではないと指摘する識者もいる。ただ、「通常は実施されている化学検査を突然、省略しても問題にないとするのは違和感がある」(流通関係者)と疑問視する声が多い。同省は「各事業者が食品事業者として責任を持って、米を販売していただくことになる」と回答するが、そうした姿勢を無責任とする向きが強い。
(鈴木雄太)