船井電機、負債819億円・資産14億円…第1回債権者集会に幹部の姿なく弁済時期は未定
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破産手続き中のAV機器メーカー、船井電機(大阪府大東市)の第1回債権者集会が2日、東京地裁で開かれた。配布された破産管財人の資料によると、4月末時点の負債が約819億円に上るのに対し、資産は約14億円にとどまり、「債権者への配当可能性は未定」という。次回の債権者集会は12月17日に開催予定。
出席者や東京商工リサーチによると、集会は非公開で約1時間半にわたって行われ、取引先の債権者ら約60人が参加。船井電機の幹部の姿は見られず、破産管財人の片山英二弁護士が、経営多角化の失敗で破綻に至った経緯のほか、約800億円の債務超過に陥っている状況について説明。出席者から弁済時期について問われると、「まだ答えられない」と述べたという。
資料では、船井は2021年、低迷する業績の改善に向け、ビジネス書などを展開する出版会社「秀和システム」(東京都江東区)の傘下に入り、秀和代表の上田智一氏が社長に就任した後、買収した脱毛サロン運営会社への支援などで資金繰りが急速に悪化し、昨年10月に破産を申し立てたと説明。当時の支出に問題がなかったかや負債総額は調査中で、資産の回収は進行中としている。
船井の取引先で1億円超の債権があるという60歳代の男性は「できるだけ多く返ってきてほしいが、負債額が大きく難しいだろう」と話した。
船井電機を巡っては、破産か民事再生かで関係者が異なる主張を展開していたが、東京地裁は3月、民事再生法の適用申請を棄却した。経営権の売却などについても関係者の間で刑事告訴や告発、民事訴訟が相次いでいる。
未払い賃金支給は完了
船井電機の破産手続きは昨年10月24日に東京地裁で開始決定が出て従業員約530人が即日解雇された。
大阪労働局によると、大阪府内のハローワークで求職登録をした357人のうち、今年4月14日時点で7割強の266人の就職先が決まった。府内の全てのハローワークで実施していた特別相談は3月末で終了し、通常の再就職支援に移行した。
即日解雇の従業員に対して、昨年10月25日に支給予定だった賃金が未払いになっていたが、債権者集会の配布資料によると、今年2月下旬~3月に約8割が支給された。残り2割の未払い分と、事前予告なしで解雇した場合に支払う必要のある「解雇予告手当」も6月20日に支給され、合計約3億7000万円の支払いが完了したという。退職金は企業年金基金から、準備ができ次第、支払われる見通しという。
◆船井電機 =ミシン問屋を経営していた船井哲良(てつろう)氏が1961年に設立。米国や日本のテレビ事業で売り上げを伸ばし、2000年には東証1部(当時)に上場した。だが、近年は中国メーカーとの価格競争の激化もあり、赤字が常態化していた。