PFAS、指針値に届かない温度で焼却…大阪の下水処理施設「分解されずに排ガスとして拡散の恐れ」 

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 健康への影響が指摘される化学物質「 PFASピーファス 」の一種「 PFOAピーフォア 」の処分法を巡り、全国の下水処理施設で義務づけられている廃棄物の焼却温度が、PFOAの分解に必要とされる環境省の指針値に達していないことがわかった。専門家は「指針より低い焼却温度では、分解されずに周辺に拡散する懸念がある」と指摘。同省が対応を検討している。(松田俊輔)

環境省「1000度以上」

 下水処理施設では、工場などからの排水に含まれる化学物質を沈殿させ、その汚泥を焼却炉で処分する。その際、ダイオキシン類が分解される800度以上で燃やすことが廃棄物処理法で義務づけられている。

 一方、環境省は2022年、化学メーカーなどを対象に、PFOAを高濃度に含む廃棄物を処分する際には、分解に必要な1000度以上で焼却するよう求める指針を定めた。

 しかし1000度以上で燃やせる炉を持つ施設は少ない。大阪府摂津市の化学工場では、敷地内の地下水に高濃度のPFOAが含まれていることがわかり、濃度を下げた上で、北東約3キロ・メートルにある府の処理施設「中央水みらいセンター」に排水している。

 同センターの焼却炉は構造上、1000度以上で燃焼できず、従来の840~850度での処理を続けていることが判明。府下水道室の担当者は「PFOAへの対処を目的とした施設ではない」と説明する。

 同センターでは、汚泥などのPFOA濃度は測定しておらず、焼却後の排ガスは大気中に放出。大気汚染の原因となる硫黄酸化物は取り除いているが、PFOAは除去できないという。

PFOAを含む排水を処理している中央水みらいセンター(大阪府茨木市で)
PFOAを含む排水を処理している中央水みらいセンター(大阪府茨木市で)

 環境省は「下水施設の汚泥にPFOAが含まれる可能性を想定していなかった。指針の対象にするかどうか検討している」とし、下水施設を所管する国土交通省担当者も「どのくらいのPFOAが汚泥に含まれているのか、海外も含めて情報収集を始めた」と話す。

 PFAS問題に詳しい京都府立大の原田浩二教授(環境衛生学)の話「1000度以上で燃やさなければ、PFOAは完全に分解されず、排ガスに含まれる可能性がある。地域住民に不安を与えかねず、今の状態で問題ないか、国や自治体は直ちに調査すべきだ」

PFAS =1万種類以上ある有機フッ素化合物の総称。熱に強く、水や油をはじくことから、フライパンのコーティングや泡消火剤などに広く使われてきた。そのうちPFOAなどは予防的な観点から、国際条約に基づき、製造や輸入が原則禁止されている。

WHO「発がん性ある」

 PFOAの人体への影響について、世界保健機関(WHO)の専門機関は、がん発症の科学的根拠が4段階で最も高い「発がん性がある」に分類している。

 PFOAなどの検出は全国で相次ぐ。岡山県吉備中央町の浄水場の水から高濃度で検出された事例では、資材置き場にあった使用済み活性炭から沢に流出したと指摘されている。米軍横田基地(東京都)では、漏れた泡消火剤による汚染が起きた。

 環境省が公表した2023年度の河川や地下水の検出結果では、22都府県の242地点で国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノ・グラム)を超えた。大阪府摂津市の地下水では1リットル当たり2万6000ナノ・グラムとなり、全国で最も高かった。

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