わかもと製薬が医師を違反接待、社有車で送迎10年…業界団体が是正指導
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取引先の病院の院長を社有車で送迎する接待を繰り返していたとして、東証スタンダード上場の「わかもと製薬」(東京)が、業界団体「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」から公正競争規約違反で指導を受けていたことがわかった。送迎接待は昨春まで10年以上続き、自社との取引を促す行為だったと認定された。
製薬会社と医師の癒着は、かねて不正の温床につながるとして問題視され、過剰な飲食接待を禁じる業界ルールなど様々な自主規制が導入されてきた。各社がコンプライアンス(法令順守)の強化を図る中、長期にわたって不適切な行為が行われていたことになる。
関係者などによると、わかもと製薬は2013年10月から24年4月、近畿地方にある病院の院長に対し、自宅と病院の間や、病院と他の医療機関の間の送迎を繰り返していた。実際に送迎していたのは、この病院担当だった支店の歴代支店長や医薬情報担当者(MR)らだったという。
公正競争規約は、景品表示法に基づく業界の自主規制ルール。製薬会社などに対し、医薬品の取引を不当に誘引する手段として医療機関側に金銭や物品のほか、便宜・労務・役務を提供する行為を禁じている。
公取協は今回、わかもと製薬による継続的な送迎を、「便宜、労務、その他の役務」に該当すると判断した。その上で、相手が有力な取引先の院長だったことなどを理由に、「医薬品の取引を不当に誘引する手段として行われた」と認定した。
支店長が関与して長期間送迎が続けられていたことから、「計画的・組織的な違反」とも指摘。経営陣などによる問題の検証や社内研修の実施など、再発防止に向けてコンプライアンス体制の抜本的な見直しを要請した。再発防止策の実施状況の報告も求めた。指導は昨年12月18日に決定し、同社へ通知した。
医薬品の製造・販売に関する公正競争規約違反への措置は重い順に、厳重警告、警告、指導の3段階に分かれる。過去5年で措置が行われたのは、21年12月、三重大医学部付属病院を巡る汚職事件で社員が贈賄罪で有罪判決を受けた小野薬品工業への警告と、今回のわかもと製薬のケースしかない。過去10年でみても3件にとどまる。今回の問題を指導にとどめたのは、違反行為の対象が院長1人で限定的だったことなどが理由とみられる。
取材に対してわかもと製薬は、「お答えは差し控える」とメールで回答した。公取協は「指導は公表しておらず、コメントできない」としている。
わかもと製薬は1929年設立。薬の製造・販売を手がけ、胃腸薬「強力わかもと」で知られる。2025年3月期の売上高は約77億円だった。
◆ 医療用医薬品製造販売業公正取引協議会 =医薬品の透明で公正な取引を確保するため、1984年に設立された。製薬会社約220社が加盟する。消費者庁と公正取引委員会から認定された公正競争規約を運用し、製薬会社の監視・指導にあたっている。