伊勢湾でイルカ生態調査 水族館と連携成果発表 三重大鯨類学研究室

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鯨類学研究室の森阪教授(前列右)と学生たち(津市で)=松本貴裕撮影
鯨類学研究室の森阪教授(前列右)と学生たち(津市で)=松本貴裕撮影

 三重大生物資源学部(津市)の鯨類学研究室は、広大な海をフィールドに、水族館とも協定を結んでイルカやクジラの生態を調べている。伊勢湾を望むキャンパスの6階。研究室横のベランダから双眼鏡をのぞくと、海面に一瞬、黒っぽい影が現れ、水中に消えた。イルカの一種、スナメリだ。研究室を率いる森阪 匡通ただみち 教授(48)は「三重大はイルカ研究には最適です」と胸を張る。

 スナメリは背びれがないため個体識別が難しく、生態には謎が多い。これまで単独で暮らしていると考えられてきたが、研究室では、伊勢湾でのドローンを使った観察に加え、スナメリが発する 鳴音めいおん を録音して個体同士の距離を分析。2~3頭の群れを作るスナメリもいることが分かってきた。

 一方、単独で見つかる例もあり、「単独性と群居性の両方が混じり合った社会を持つ可能性が示された」とする研究成果をまとめ、昨年9月、国際学術誌にオンライン掲載された。

 協定を結ぶ鳥羽水族館(三重県鳥羽市)でのスナメリ研究では、1頭だけでいる時に多く出される新しい鳴音を発見。繁殖に関する別の鳴音と使い分けてコミュニケーションをしている可能性があるとの発表は、世界で初の報告となった。

 こうしたチームの研究について、森阪教授は「人間の複雑な社会がどう進化したかを推察するには、様々な動物の社会を比較することが重要。イルカの研究は人間の理解につながる」と意義を強調する。

 近年は、海水浴場にイルカが姿を見せたり、海水浴客らがイルカにかまれてけがを負ったりするなど、野生のイルカと人間の距離感が課題となることも増えてきた。森阪教授は野生のイルカに「餌をやらない、触らない」ことの徹底を提案し、イルカと人間が共存する方法も模索している。

 イルカを守るには、個体に負担をかけずにデータを取ることも重要だ。研究室では、イルカのふんに含まれるDNA情報から年齢を推定する方法を開発した。この研究を行った八木原風助教(28)は「群れの年齢構成を示す“人口ピラミッド”を作れば、絶滅リスクの予測もできるようになる」と語る。母乳やあか、ふんを調べて、普段の食べ物を推定する研究も進んでいる。

キャンパスから伊勢湾に双眼鏡を向けスナメリを探す学生たち
キャンパスから伊勢湾に双眼鏡を向けスナメリを探す学生たち

 研究室の学生は19人。大学の実習船「勢水丸」で沖に出て、イルカを観察する「海生哺乳動物学実習」もある。参加した4年生は「鯨類の研究がしたくて三重大を選んだ。飼育員になって魅力を伝えたい」と話す。

 伊勢湾や熊野灘に面する三重県では、マッコウクジラなど国内に生息する鯨類の半分近くが見られるという。研究室には繁殖生理学の専門家もおり、森阪教授は「研究対象は幅広い。鯨類の研究を目指す高校生にも興味を持ってもらいたい」と話している。

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