テレビ局アナによる「4000万円」横領の内幕…本人が告白、「地獄だった」投資の沼に落ちるまで

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横領は3200万円まで膨らみ

 22年4月。保証金を預けて自己資金以上に取引を行う「信用取引」を使って石炭輸入会社の株を買った。大きく値が動いた日に、1日で約250万円の利益をあげた。

 これに気をよくして、同社の株式売買にのめり込んでいく。だが、その翌日の売買から値下がりした。大きく利益を出した1週間後には、500万円以上の損失が出た。江田は、この一連の売買で1200万円を労組費から引き出して投資に充てている。

取材は3時間に及んだ。江田は一度もその場を離れることなく、告白した
取材は3時間に及んだ。江田は一度もその場を離れることなく、告白した

 その後もこの会社の株にこだわって売買を続けたが、5月に入っても上向く気配はなかった。元々、「株の売買は朝少し触るだけだった」が、この頃には四六時中、スマホが手放せなくなっていた。午後3時に日本の市場が閉まっても、夜からは米国市場が開く。国内市場に強く影響を及ぼすため、「値動きが気になって一睡もできなかった」日々が続いた。

 5月10日からは、さらに激しく株価は下がった。投資先の3月期決算が目前に迫っていたためだ。

 というのも、株式の短期売買では、決算をまたがずに株を手放すのがセオリーだ。市場の期待を下回る決算の発表があった場合、株価が下がるためである。売り注文は強くなり、株価はますます下げた。追加の保証金を求められ、さらに約1000万円の横領に手を染めた。

 5月13日。迎えた決算日。午後3時には場が閉まり、その後、決算が発表される。江田はこの時期、最大約600万円にもなる含み損を抱えており、決済すれば多額の損失が確定してしまう状況だった。補填できるだけの自己資金は残っておらず、さらに値下がりすれば、「逮捕は免れないと思った」。この時、横領した金は3200万円に膨れ上がっていた。

 江田の取引残高報告書には「5月13日」だけ、売買記録がない。

 それまで激しく売買を繰り返していたのになぜ――? 「保有した株をどうするのか、決められなかったから」だという。仕事の合間、何度もトイレに駆け込み、スマホを握りしめた。「どうしよう、どうしよう、どうし よう……」。午後3時、市場が閉まった。

 「怖くて、もう自分で何も決められなかった。トイレの床に座り込んで、震えていた」

 そして、決算が発表された。

株価は急騰、ずさんな隠蔽工作

 「当社は2023年3月期に創業以来の最高益を大きく更新する見込み」

 決算資料には、こんな文言が並び、特別配当も発表された。株価は急騰し、休みが明けた5月16日にはストップ高で値がつかず、17日になって成り行きで売却した。保有数は4万株。横領した金を全て返しても、手元には約2700万円の金が残った。

株価のマイナスを抱えていた時期を振り返るとき、江田は汗をかいていた
株価のマイナスを抱えていた時期を振り返るとき、江田は汗をかいていた

 「もう横領した金を手放したかった」と“ 隠蔽(いんぺい) 工作”を行ったが、ずさんだった。横領した金を100万円ずつ自身の口座から引き出し、労組の口座に入金した。21年8月から22年5月にかけて3200万円の金が引き出されている一方、5月末に4日間かけて全ての金が戻っている。「入出金記録は汚れ切って」おり、新しい通帳に切り替えた。

 監査こそ乗り切ったものの、7月に労組の役員の改選で江田は財務部長の職から外れた。今までの入出金記録が記された通帳を新体制から求められたが、「汚損したので取り替えました」と答えた。

発覚

 22年11月。夕方のニュースを読んだ後、労働組合長に呼び出された。横には弁護士も同伴しており、「何の話か分かる?」とたずねられた。「分かります」と答えるほかなかった。銀行の入出金記録や過去の領収書など、資料は全てそろっていた。もう、逃げ道はなかった。

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