性別変更の外観要件、ホルモン療法で満たすと判断…広島高裁が手術なしで変更認める決定

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 性器の外観を変える手術をしていない性同一性障害の当事者が、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう求めた家事審判の差し戻し審で、広島高裁は10日、性別変更を認める決定をした。申立人がホルモン療法を受けたことにより、性同一性障害特例法が定める変更の要件のうち「変更後の性別と近い性器の外観」(外観要件)を満たすと判断した。

広島高等裁判所
広島高等裁判所

 手術なしで男性から女性への変更を認める司法判断は異例。高裁は外観要件について「常に手術が必要であると解釈すれば違憲の疑いがあると言わざるを得ない」とも言及した。

 代理人弁護士によると、申立人は西日本在住で50歳未満の社会人。性同一性障害の診断を受け、戸籍上は男性で、女性として社会生活を送っている。

 高裁は決定で、外観要件について、性器が他者の目に触れる公衆浴場などで起きる社会生活上の混乱を回避するために正当だと指摘。一方、身体を傷付ける手術を受けるか、性別変更を断念するかという二者択一を迫るのは「過剰な制約を課すことになる」とした。

 その上で、ホルモン療法を継続的に受けることで、性器の形状に変化が生じることは医学的に確認されており、「手術なしでも外観要件は満たされる」との考えを示した。申立人はホルモン療法を受けており、医師による診断でも女性的な体になっているとし、性別変更を認めた。

 この審判では、最高裁大法廷が昨年10月、特例法の別の要件で「生殖機能がない」(生殖不能要件)との規定を「違憲・無効」とする決定を出した。一方、外観要件は「2審で判断されていない」とし、審理を高裁に差し戻していた。

 申立人はこの日の決定後、代理人弁護士を通じ「物心ついた時からの願いがやっとかなった。ギャップによる生きにくさから解放されることを大変うれしく思う」とのコメントを出した。

 今年2月には、岡山県新庄村の農業、臼井 崇来人たかきーと さん(50)が手術を行わずに性別変更することが岡山家裁津山支部で認められ、戸籍を女性から男性に性別変更した。臼井さんは今回の決定について「同じ立場の人は今後申請しやすくなる」と歓迎した。

 京都産業大・渡辺泰彦教授(家族法)の話「『違憲の疑い』という表現にとどめ、ホルモン療法が必須なのか、どのような外観であれば性別変更が認められるのかといった基準が示されず、不透明感も残った。性別変更の要件が緩和される中、直面する課題に目を向け、冷静な議論が求められる」

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