在米研究者にビザ下りず「余儀なく帰国」相次ぐ…トランプ政権の研究機関リストラと入管強化で

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 【ワシントン=中根圭一】米国で働く外国人研究者らが、査証(ビザ)の新規発行を認められない事例が相次ぎ、日本人にも影響が出ている。科学研究費を含む政府の歳出削減を進めるトランプ政権が研究者の管理を厳格化していることが背景にあり、共同研究などへの影響が懸念されている。

トランプ政権による人員削減が進む米国立衛生研究所
トランプ政権による人員削減が進む米国立衛生研究所

 日本人研究者への影響が特に出ているのは、世界最大級の医学研究機関である米国立衛生研究所(NIH)だ。トランプ政権は、職員約1200人の削減や研究部門の統廃合を進めている。

 現地の大学関係者らによると、NIHの任期付き研究員だった日本人の一人は2月、常勤職への昇進で別のビザに切り替える予定だったが、人員削減で昇進先の役職が消滅。ビザの新規発行が認められず、やむなく帰国したという。

米国のビザや滞在資格を巡る日本人研究者らへの影響例
米国のビザや滞在資格を巡る日本人研究者らへの影響例

 NIHで働くことが決まっていた別の日本人研究者はトランプ政権発足後、一方的に雇用契約の停止を通告された。ビザ発行に必要な書類が作れず、渡米できなくなった。NIHはがんや感染症など最先端の医学分野で日本と共同研究をしているが、日本政府関係者は「日米連携が先細りする可能性がある」と懸念する。

 不法移民対策を重視するトランプ政権は、外国人の出入国管理も強化し、その影響は留学生にも及ぶ。

 現地報道によれば、米連邦政府は人工知能(AI)などを使って留学生のSNSへの書き込み内容や犯罪歴を確認し、1月以降、4700人以上の留学生の滞在資格を取り消した。イスラエルのガザ侵攻への抗議活動をテロ支援行為とみなし、拘束したケースもある。

 日本人の場合、従来は問題視されなかった軽微な交通違反を理由にビザや滞在資格が取り消された例があるという。在米日本大使館は「所属する学校や留学生受け入れ機関に状況を確認し、弁護士にも相談してほしい」と呼びかけている。

身に覚えのない犯罪歴が理由「頭が真っ白に」

 米連邦政府に滞在資格を一時取り消された日本人留学生の恩田 すぐる さん(41)が読売新聞の取材に応じた。

米国の滞在資格を一時取り消された留学生の恩田賢さん=恩田さん提供
米国の滞在資格を一時取り消された留学生の恩田賢さん=恩田さん提供

 2019年から情報科学を学ぶため留学中の恩田さんは、ユタ州にあるブリガムヤング大の博士課程の学生。4月8日に大学経由で届いた通知には犯罪歴を理由にした決定と記されていたが、「身に覚えがなく、頭が真っ白になった」と振り返る。

 研究継続には、日本でビザを取り直す必要があった。弁護士に相談し、通知が届いた10日後に無効を求めて連邦政府を提訴すると、すぐに「資格が復活した」と連絡があった。恩田さんは「米国で暮らす家族も不安で仕方なかった。なぜ取り消されたのか、明確な説明は一切ない」と打ち明ける。

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