※1:本文で紹介した2024年度中に備蓄米を放出しなかった理由は、ある意味、表向きのきれいな解釈をした場合、のものである。より実質的には、8~9月の店頭で在庫が払拭して、最初に備蓄米の放出の必要性が指摘され始めた時点では、むしろ「この程度の価格上昇はむしろ歓迎すべき」と考えられていた、という理由が大きい(9月の東京都区部小売価格は3,285円/5kg)。その後、10月に3,700円台、11月に3,900円台、12月に4,000円台にまで上昇して、さすがにこれは高騰しすぎ、という判断が生まれ、1月になっての方針変更になった、と考えられる。
というのも、これまで見てきたように、小麦をはじめ、他の食品価格は、軒並みこの3年ほどで上昇しているのにも関わらず、コメだけは低位安定していた。その結果、コメ農家からは、生産コストの価格転嫁ができておらず、非常に経営が厳しくなっている、という声が相次いでいた。農産物生産コストの価格転嫁をどう実現するかが、この2年ほど、農業界・農政においての大きな課題であり続けている。その状況での概算金の上昇であり、多くの農家が「やっと一息つける」と胸を安堵した状況であった。その状況で、農水省としても小売価格を低下させるような政策に、手を付けることはとてもできなかったと考えられる。