国立天文台

国立天文台 技術系職員会議

第32回 天文学に関する技術シンポジウム

最終更新:2012年10月1日

10月9日(火曜日)

開始 終了 内容・講演番号 講演者 タイトル・予稿
12:30 13:10 受付    
13:10 13:20 開会挨拶 岡田 則夫
国立天文台技術系職員会議代表
 
13:20 14:10 特別講演1 岡崎 彰
群馬大学教育学部
小望遠鏡による食連星の測光観測
私が所属する群馬大学教育学部では、これまで、学部棟の屋上に30cm望遠鏡を置き、冷却CCDカメラを取り付けて、主に学生の卒業研究等の教育用として食連星の測光観測を行ってきた。学生の大半は小中学校の教員志望であり、彼らが観測・整約・解析をしやすいように多少の環境整備も行ってきた。研究施設の観測装置開発とは別次元の観測や整約の工夫とともに、ここで得られた食連星の観測研究の成果についてもいくつか紹介する。
14:10 15:00 特別講演2 橋本 修
群馬県立ぐんま天文台
ぐんま天文台における観測環境と科学的成果
ぐんま天文台は公開天文台でありながら、第一線の研究観測の現場であることを目指して建設された。設立に多大な貢献をされた故清水実先生の哲学が反映された結果である。主力である150cm望遠鏡を中心に様々な観測装置が開発・整備され、本格的な観測に利用できるようになっている。望遠鏡や各種観測装置について、今日までの観測成果を交えて紹介し、当地での観測環境や運用にまつわる問題点などについても言及する。
15:00 15:10 休憩    

セッション1

開始 終了 内容・講演番号 講演者 タイトル・予稿
15:10 15:30 1 坂江 隆志
埼玉県立浦和西高等学校
教育用太陽分光器の製作と応用
教育現場で太陽スペクトルの観察に使用することを目的として、高い波長分解能をもちながら市販の小型赤道儀に搭載できる軽量な太陽観測用分光器の製作を行った。この分光器は1200g/mmの回折格子と6μmのスリットを用いたリトロー型で、回折格子を回転させることで様々な波長に合わせることができる。眼視での観察のほか、撮像によるスペクトロヘリオグラムやドップラーグラムの作成に応用した。
15:30 15:50 2 田澤 誠一
ハワイ観測所
すばる望遠鏡における冷却液漏れ検出機構の検討
平成23年7月2日早朝(ハワイ時間)、すばる望遠鏡可視光用主焦点ユニット(POpt)において、冷却液が漏れる事故が発生し、POptのみならず、望遠鏡本体の他にカセグレン焦点部の観測機器に損害を与え、その後の観測計画に大きな影響を及ぼした。POptは修理終了後、安全対策を施され、平成24年7月15日(ハワイ時間夜)より観測が再開された。本発表では更なる冷却液の漏れ対策として、液漏れ検出機構について検討したので報告する。
15:50 16:10 3 沖田 喜一
岡山天体物理観測所
188cm望遠鏡赤経軸の障害対応など(仮題)
昨年12月に発生した188cm望遠鏡赤経軸周りの障害に対する修理で、種々の知見が確認された。修理後にも新たな不具合が発生したり、その原因を特定するまでの一連の対応も含め、老朽化した機械の不具合対応の留意点を紹介する。加えて、当該望遠鏡の改修を来年予定しており、指向精度等の問題点を把握する性能評価試験等についても紹介する。
16:10 16:30 4 坂本 彰弘
岡山天体物理観測所
3.8m新技術望遠鏡の主鏡支持機構検討
3.8m新技術望遠鏡のセグメント主鏡を支持するアクチュエータの動作試験を行い、検証を行ったので報告する。
16:30 17:30 記念撮影・会場移動
17:30 20:00 懇親会

10月10日(水曜日)

セッション2

開始 終了 内容・講演番号 講演者 タイトル・予稿
9:30 9:50 5 宮田 隆志
東京大学天文学教育研究センター
中間赤外線装置の技術開発
中間赤外線は観測装置例も工業的利用も少ない波長帯であり、装置のための各種技術は独自開発する必要がある。我々は現在、メッシュフィルタ、モスアイ、低温高速エレキ、冷却チョッパ、等の要素技術を開発中である。これらはSubaru/TAO用装置MIMIZUKUに搭載されるものであるが、TMT/SPICAでの利用も視野に入れ開発を進めている。 本公演ではこれら技術を概観し、その到達点と今後の課題について述べる。
9:50 10:10 6 高橋 英則
東京大学天文学教育研究センター
TAO6.5m望遠鏡搭載近赤外2色同時多天体分光撮像装置の開発における技術要素
南米チリのアタカマ高地に建設が計画されている東京大学アタカマ天文台(TAO)6.5m望遠鏡に搭載される近赤外2色同時多天体分光撮像装置(SWIMS)の開発について紹介する。チャナントール山頂は、その標高故赤外線観測に最も適したサイトの一つであるが、今回はその特徴を活かした近赤外観測装置に採用されている多天体分光ユニット、面分光ユニットなどのSWIMS独特の機能について、その技術要素を中心に講演を行う。
10:10 10:30 7 秋山 正幸
東北大学理学研究科
TMT多天体補償光学系の実現に向けた要素開発
我々のグループではTMTの多天体補償光学系の実現に向けた補償光学系の要素技術の開発を進めている。多天体補償光学は次世代の補償光学系であり、複数のレーザーガイド星を打ち上げ、それらで測定される波面をトモグラフィーの手法を用いて解析し、広視野の中の多天体に対して同時にそれぞれに最適化した補正を行うというものである。これをTMTの補償光学系として実現するためには(1)光の波面の絶対的な形状の測定と可変形鏡のオープンループ制御、(2)トモグラフィーの高速計算、(3)多素子大ストロークの小型可変形鏡、が必要であり、このそれぞれについて我々は要素開発を進めている。開発の報告とともに超大型望遠鏡の装置開発への地方大学からの参加の現状について紹介したい。
10:30 10:50 8 松尾 宏
先端技術センター
南極干渉計に向けた技術開発
南極での遠赤外線干渉計を提案している。地球上でもっとも宇宙に近い環境でどのような技術が必要とされるかについて議論する。
また、基礎開発分野での研究協力の重要性についてもコメントしたい。
10:50 11:10 9 石崎 秀晴
重力波プロジェクト推進室
エラスチカばねの開発
建設中の大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)の低周波防振装置の構成要素としてのエラスチカ(elastica)ばねの開発実験に携わっている。これは,干渉計を構成するレーザー反射鏡を地面振動の鉛直成分から絶縁する役割を担う。エラスチカとは細長い棒や薄板(ブレード)状のバネを大きく撓めたときの形状である。すなわち,座屈後現象(post-buckling phenomena)を活用するものであり,振動系としては未知なことが多い。
11:10 11:50 ポスターセッション1   講演番号:特別講演2、2、4~6、8、9
7件
11:50 13:00 食事    

セッション3

開始 終了 内容・講演番号 講演者 タイトル・予稿
13:00 13:20 10 石井 貴子
京都大学大学院理学研究科附属天文台
京都大学理学部附属天文台における教育普及活動
京都大学理学部附属天文台は、京都市の花山天文台(データ解析センター)と岐阜県の飛騨天文台(観測の主力設備)の二つの天文台から構成される。大学の天文台ではあるが、学校や生涯学習関係の見学や実習を受け入れており、一般公開や観望会も開催している。 本講演では、これら附属天文台の教育普及活動について紹介する。
13:20 13:40 11 中桐 正夫
天文情報センター
国立天文台博物館構想について
国立天文台天文情報センターに2008年、アーカイブ室が発足し、東京天文台(国立天文台の前身)から流出した歴史的に貴重な望遠鏡、測定装置などの収集を進めるとともに、国立天文台に残された歴史的な望遠鏡、測定装置、天体写真乾板・フィルムの整理、復元、展示を進めている。天体写真乾板・フィルムについてはデジタルデータとして保存を進めている。これらの活動をさらに発展させるために、国立天文台博物館構想の検討を進めている。
13:40 14:00 12 長山 省吾
天文情報センター
国立天文台ウェブサイトの運用
国立天文台ウェブサイトのフロントエンド、バックエンドの状況と運用体制、そして2012年4月1日に実施したリニューアルの内容と成果について紹介する。
14:00 14:20 13 新井 寿
群馬県立ぐんま天文台
身体障がい者対応・ユニバーサル天体望遠鏡の製作
身障者対応の観望用光学装置は、公共施設の大型望遠鏡には装備されている場合もあるが、専用品のため他の望遠鏡には使用できない。一方、移動可能な小型望遠鏡に使用できるようなものは市販されていない。そこで、市販の天体望遠鏡に追加の光学機材を取り付けることにより、車いすを利用している場合や、ベッドに横たわったままでも、観察者の目の位置に接眼部を合わせられるようにしたユニバーサル天体望遠鏡を研究・開発した。
14:20 14:30 休憩    

セッション4

開始 終了 内容・講演番号 講演者 タイトル・予稿
14:30 14:50 14 仲谷 善一
京都大学飛騨天文台
京都大学飛騨天文台SMART Hα/連続光高速撮像装置の設計・製作
京都大学飛騨天文台では、太陽地場活動望遠鏡(SMART) を用いて、H-alpha 及び高精度スペクトル地場観測を行っている。このSMART は4 連の屈折望遠鏡(口径20cm × 2、口径25cm × 2) で、このうちT3 と呼ばれる25cm 望遠鏡をリオフィルター式H-alpha 部分像望遠鏡をH-alpha/連続光高速撮像望遠鏡へと改造を行ったので報告する。 H-alpha/連続光高速撮像システムは、光を2 つの撮像系に分けるビームスプリッタ、H-alpha と連続光(647nm)の多層膜バンドパスフィルターおよび2 台の高速CCDカメラ(1600 × 1200 画素) から構成され、これをT3(25cm望遠鏡) に設置する。視野は350 ″× 260”をカバーし、25 フレーム/秒で2 つの画像を同時に取得する。H-alphaのフィルターは透過幅3 Aのものを採用したため、純粋な彩層画像は得られないが、同時に取得した連続光画像を差し引くことによりH-alpha 線の積分強度に対応する画像を得ることになる。露出時間は1msec 程度のため、大気の揺らぎの時定数よりも十分に短いことから、スペックル像再生処理を施すことにより、回折限界の解像度(~0.6 秒角) を達成することができる。 本装置は名大STE 研大型共同研究の支援を受けて製作した。
14:50 15:10 15 奥村 真一郎
日本スペースガード協会
TDIモードを応用した短周期変光観測
TDI方式によるCCDの読み出しは本来、第31回技術シンポで紹介したように視野の中で移動する物体の動きに電荷転送速度を同期させることにより、移動物体を高S/Nで検出するための手法である。この手法を追尾中の天体(視野の中で静止した天体)の観測に適用して、故意に延びた像にすることにより露出時間中の光度変化の測定を試みた。特に、秒単位で変光する人工天体の観測結果について紹介する。
15:10 15:30 16 布施 哲治
情報通信研究機構鹿島宇宙技術センター
小型望遠鏡を用いた低軌道衛星の位置観測
情報通信研究機構では、企業や大学が開発する超小型衛星に光通信用レーザ発振器やコリメーターを搭載して、地上との光通信実験を計画している。低軌道を周回する超小型衛星は、一般的に光学で見える可能性は低いが、光通信用の光を発しているため、地上から観測して軌道決定できる可能性がある。本発表では、鹿島宇宙技術センターの35cm望遠鏡による超小型低軌道衛星の観測準備状況を報告する。
15:30 16:50 17 鶴田 誠逸
RISE月惑星探査検討室
月面天測望遠鏡(ILOM)地上試験観測用水銀皿の試作
写真天頂筒型の月面天測望遠鏡(ILOM)の開発を行っているが、ILOM-BBMを使って地上試験観測を行うことで月面観測時の問題点を探る計画を進めている。今回、反射鏡としての水銀皿を試作して、水銀面の面精度や振動の影響などを計測して、最適な形状の水銀皿を模索した。試作した水銀皿について、測定結果やその問題点について報告する。
15:50 16:30 ポスターセッション2 講演番号:10~16
7件
16:30 17:00 退室    

10月11日(水曜日)

セッション5

開始 終了 内容・講演番号 講演者 タイトル・予稿
9:30 9:50 18 三好 真
国立天文台電波研究部
ブラックホール解像用移動型サブミリ波望遠鏡
銀河中心ブラックホールSgrA*の解像の決めては千キロ~2千キロの短基線VLBIにある。また撮像のためにはuv面を埋めねばならないがそのために移動するVLBI局を考えている。我々は名古屋大学Z研で開発された栗田架台をベースにそのゼロ号機を作ろうとしている。設計等始まったばかりだが、概説する。
9:50 10:10 19 高橋 敏一
先端技術センター
ALMA-Band4カートリッジの量産
我々は、ALMA 計画におけるバンド4(125-163 GHz)カートリッジ受信機の開発、製造を行っている。 現在、アルマ初期科学運用サイクル2 に間に合うよう、2013年内中までの、全カートリッジ出荷に向けて、月産3 台を目指して量産を開始し、作業を行なっている。 これまでの進捗状況や、問題点等について報告する。
10:10 10:30 20 伊藤 哲也
先端技術センター
ALMA 受信機組立センター(英国)での技術支援
ALMAの受信機は各国で製造される10の周波数帯のものが組み合わされて構成される。この各周波数帯の受信機を一つの真空冷却容器 (ALMA デュワ)に組み込ん で総合性能評価試験を行うのがALMA Front-End Integration Centor (FEIC 意訳:受信機組立センター) で英国、米国、台湾の3か所に設置されている。 日本製の Band4とBand8の受信機を英国のFEICで初めてALMAデュワに組み込み試験を行うということで技術支援を要請され、2週間にわたって作業を行ってきた。これについて報告する。
10:30 11:10 ポスターセッション3 講演番号:17~20、P1~3
7件
11:10 11:30 片付け    
11:30 12:30 食事    
12:30 16:30 エクスカーション ぐんま天文台

ポスターのみの発表

講演番号 講演者 タイトル・予稿
P1 鹿島 伸悟
RISE月惑星探査検討室
月面天測望遠鏡(ILOM)へのDOE適用検討
月面天測望遠鏡(ILOM:In-situ Lunar Orientation Measurement)計画では星像中心を1masという高精度で測定する必要があるため、通常のレンズだけで構成した場合、±0.2℃程度の温度変動しか許されず実現が困難である。そこで、DOE(回折レンズ)と通常のレンズを組み合わせることにより温度変動範囲を広げる検討を行い、実現可能な±約5℃という解析結果を得た。
P2 和田 拓也
野辺山宇宙電波観測所
45m電波望遠鏡メトロロジーの開発
野辺山の45m電波望遠鏡は、ミリ波望遠鏡としてはは世界で最も大きさを持つ。高い角分解能を有しているが、その為には高いポインティング精度が必要とされる。45m鏡では、ホモロガス設計によって主鏡変形は小さくなるように補正されているが、風によっても変形する事が知られている。それゆえ、過去に風による変形量の定量化を進めるとともに、補正値の算出方法が検討されてきた。今回は、簡単に概要と現状報告する。
P3 久保 浩一
先端技術センター
ALMA-Band4カートリッジのビーム測定
ALMA-Band4では、カートリッジの量産前審査(MRR)と前後して、ビーム関連の測定に関しては、新たな状況になった。以前よりのX-pol(交差偏波)問題では、まず常温での窓材の有無に加えて、傾斜の有無、ホーン単体性能、ホーン+OMTの組合せ性能、加えて測定周波数を1GHz刻みで細かくし、Band4の帯域全体での特性を調査した。さらに一台だけだが、ビームの位相面が大きく傾斜し、性能を評価するAperture-efficiencyがスペック割れを起こすものが出た、幸い部品を交換する事でスペックを満たすことができた。これらビーム関連測定の現状について報告する。