先端研究の情報流出対策を強化、海外の共同研究者の出身や資金提供など調査…文科省
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文部科学省は、大学などの研究機関が取り組む先端研究に関して、情報セキュリティーの強化に乗り出す。経済安全保障の観点から、半導体や量子技術などの成果が国外に流出するのを防ぐ狙いがある。
同省所管の国立研究開発法人「科学技術振興機構(JST)」が採択し、研究費を配分する一部の研究を対象として、今年度から試行的に実施する。
具体的には、JSTがそれぞれの研究について、研究体制を確認したりアンケートを実施したりして、流出のリスク度を定める。特に先端研究の分野は海外との共同研究など国際連携が進んでおり、関与する海外の研究者らの出身機関や、外国からの資金提供の有無などを調べる。
リスクを低減させる必要があると判断した場合は、研究データに接する研究者を限定することや、実験室への立ち入りやカメラの持ち込み制限などの具体策を講じるよう要請する。
先端研究を巡っては、2023年6月に国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市)の研究員が、中国企業に研究データを漏らしたとして不正競争防止法違反容疑で逮捕されるなど、経済安保上の懸念が指摘されている。
こうした状況を踏まえて文科省は昨年12月、研究資金を拠出する研究のうち、経済安保上重要な分野の技術開発などについてはリスク評価を行うことを決めていた。
また、今月には国際研究開発政策課を省内に新設し、先端研究の国際連携と経済安保の確保を一体的に進める体制整備を進めており、研究機関側に具体的な対処方法などを助言する相談窓口も設置した。
同省は今後、情報セキュリティーを確保する研究対象をAI(人工知能)などにも広げて対策を拡充していく考えだ。