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会いたいか否か…揺れる
離れて暮らす親に対して、子どもが抱く感情は様々だ。
小学１年の時に両親が離婚した男子大学生（２１）は、別れる際に父から言われた「大きくなったら会いにおいで」との一言が頭から離れずにいる。「顔も覚えていないくらいあいまいな記憶だけど、その言葉がずっとひっかかっている」と語る。
母も自分も暴力を受けていた。怒られることに慣れてしまっていたせいか、不思議と「怖かった」という印象はない。休みの日には一緒にゲームをしたり、遊びに出かけたりした気もするが、具体的なことは何も思い出せない。
「自分にちゃんと父親がいたことを確認したい」
どうしても会いたくなって母に頼んでみたが、泣いて拒まれた。自分を心配してくれる気持ちが伝わり、母の前ではもう口にはしないが、今でも会いたい。「父親とけんかした」という友人の話すら、うらやましいと感じてきた。
あてはないが、昔、家族で住んだ街を訪ねてみようと思っている。そこでもし父に会えたら「今どうしているの？」「僕は将来、こんなことがしたいと考えている」。そんな話ができればと願う。
その一方、幼い頃に両親が離婚した神奈川県の女性（３７）は「私の中で父は『危険人物』の認定」と言い切る。父のＤＶ（家庭内暴力）が原因で別れたと母から聞いており、「父から『会いたい』と連絡が来たこともあったらしいけど、何の感情もわかなかった」と振り返る。
最近、実家の整理をした母から、父の写真を初めて見せてもらった。記憶にない顔立ちは「私に似ていて、ちょっと感動した。多少の興味はあるけれど、会いたいとまでは思わない」。
■子どもの心情理解を
親の別居・離婚を経験した２０～３０代の１０００人に行った法務省調査で、父母の別居直後、別居の親とどれくらい会いたかったかを尋ねたところ、毎日や週１回などが計２６・１％。「気が向いたときに会えればいいと思った」が１７・９％で、「全く会いたくなかった」「あまり会いたいと思わなかった」は計３２・２％だった。
また、父母間で親子交流の取り決めがあったという人のうち、取り決めについて「本心を伝えた」は３７・７％、「伝えたが、本心ではなかった」は２７・９％。本心を伝えなかった理由は「同居親に配慮」が５５・９％と最も多く、「父母の双方に配慮」が４４・１％だった。
親が離婚した子どもの心理に詳しい大正大教授（臨床心理学）の青木聡さんは「『会いたい』と言っていても本心は会いたくなかったり、逆のケースもあったり。子ども自身が本心に気づいていない場合もある」と指摘。「大抵は『会いたい』と『会いたくない』という気持ちが併存しており、その割合も時々で変わる。子どもの言葉は氷山の一角であり、その下にはたくさんの気持ちがあることを周囲の大人は理解してほしい」と訴える。
■望めば会える関係
両親の離婚後、母に育てられた関東在住の２０代男性は「親と会い続けるかは別として、どんな人かを知っておくことは大事だと思う」と話す。
親子交流を支援する民間団体のサポートを受けて、幼い頃から定期的に父と会うことができた。おもちゃを買ってもらったり、野球盤で遊んだり。もっと一緒にいたいと思う日もあれば、気乗りしない日もあった。母からは会話の内容を制限されていたため、話す際は神経も使った。それでも、自分の顔がなぜ母や親戚とあまり似ていないのかを含め、ルーツを知ることができた意味は大きいと感じる。
現在、働きながら親子交流を支援するボランティア活動をしている。いろんな家族にふれ、自らの経験と重ね合わせて見ることも多い。男性はいま、「子どもは成長し、やがて自分で判断ができるようになる。親の顔を知っていて、望んだ時に連絡が取れる関係を作れたらいいんじゃないか」と考えているという。
