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調停申し立て 20年で3倍
連載「離婚と子ども」第3部は、離れて暮らす「別居親」と子どもが定期的に関わる「親子交流(面会交流)」を取り上げる。2026年5月までに施行される民法などの改正法では、父母が別居する際に親子交流について話し合うよう求める規定などが設けられる。初回は親子交流の現状や課題、法改正のポイントをまとめた。
■取り決め6割止まり
親子交流は12年4月施行の改正民法で離婚時の協議事項として明文化され、離婚届に養育費とともに父母間で取り決めたかどうかを記すチェック欄ができた。ただ未記入でも届は受理され、昨年1~3月の法務省調査では「取り決めをしている」とした割合は60%にとどまっている。
届を出せば成立し、公的機関の関与がない「協議離婚」が全体の約9割を占める日本では、親子交流の大半が父母の考えに基づいて行われている。子どもと別居親が遊ぶほか、食事や宿泊を伴うこともあれば、手紙やSNSでのやりとり、ビデオ通話など間接的に交流することもある。
子どもが両親の元を自由に行き来するケースもあれば、公正証書などで「月1回」などと定めて行う家庭もある。
その一方、父母間の感情のもつれなどから一度も行われなかったり、途中でストップしたりするケースもある。別居親らが家庭裁判所に親子交流を求める調停の申し立ては増加傾向にあり、23年は1万2577件と20年前の約3倍に上った。こうした調停や審判を経て行われる場合は月1~2回、数時間ずつの頻度で交流することが多い。
■家裁が試行促す
父母が離婚しないまま、別居状態が長引くようなケースについて、従来は親子交流に関する規定がなかった。そこで今回の改正法には別居する際も、離れて暮らす親と子どもの交流について協議するよう父母に求める条文が新たに設けられた。
また、別居親らから親子交流を求める調停などの申し立てを受けた家裁が、交流すべきかどうかを判断するための手続きとして、父母に親子交流の試行を促す仕組みもスタートする。これまでも各地の家裁において、家裁調査官らが立ち会うなどして取り組まれたものが制度化される形だ。
■祖父母や兄弟姉妹は
父母以外の親族についても、子どもとの交流に関する規定ができた。法施行後は家裁が「子の利益のため特に必要がある」と判断した場合に交流が認められる。申し立ては原則として父母が行うが、どちらかが亡くなったり、行方不明になったりした場合などは祖父母や兄弟姉妹のほか、過去にその子どもを育てていた親族に限り、自ら申し立てができるようになる。
父母両方と良い関係
幼い頃に両親が離婚した神奈川県の自営業男性(34)
父と離れてさみしかったし、「なんで一緒に暮らせないんだろう」と思っていたが、兄と2人で定期的に父と会っていた。野球やサッカーをしたり、遊園地に行ったりして楽しかった。今は自分にも妻子がいて、正月の昼は家族を連れて母の親族と食べ、夕食は父の親族と取る。父母はともに再婚し、自分と再婚相手との仲も良いので、親が4人いる感じだ。
娘自身が会わない選択
元夫に経済的・精神的な暴力を受けていたという50代女性
娘が中学生の時に離婚した。娘が望むなら、嫌でも会わせなければと思ったが、娘は望まなかった。大学生になった今も「父親としての責任を果たさず、家族を傷つけた人とは会いたくない」と言う。子どもに選択する権利があるべきだと思う。
別居親の愛情知る機会
国内外の離婚家庭の支援に詳しい東京国際大教授(臨床心理学)の小田切紀子さん=写真=に法改正の意義などを聞いた。
海外 行政が助言・補助も
――法改正の意義は。
子どもが別居親の愛情を知るのは大切だ。多くの研究で、親子交流の経験は成長後の社会適応や大学進学率の高さなどと強い相関があると示している。改正法も親子交流を重視しており、評価できる。
一方で、離婚時に父母が子どもの心情や親としての対応などを学ぶ講座の受講義務化が議論の末、見送られたことは残念だった。米国の大半の州や韓国などでは受講が離婚の必須条件だ。国も親への支援自体は促進する考えを示しており、改めて義務化の議論を深めるべきだ。
――どの親子も交流すべきか。
虐待や暴力があれば行うべきでない。ただ実態の見極めが難しい。米国やオーストラリアなどは暴力の背景や頻度などを客観的にアセスメント(評価)する手法が採用されており、交流に監督者を付けるか、制限するかなどを判断している。
日本の裁判所ではそうした仕組みがないまま、調停などで交流の可否が判断されている。同居親も安心できるようにアセスメントの導入が急がれる。
――行政にできることは。
離婚後に「子どもが反抗的になった」「別居親に会わせるのが心配」と悩むひとり親に対し、自治体による法律相談だけでなく、心理の専門家が相談に応じる機会があるといい。外部機関に委託する方法もある。余裕が生まれれば、子どもの未来に目を向けられるようになるだろう。親の争いに巻き込まれる子どもの支援も欠かせず、親の別居や離婚について相談できる仕組みを整える必要がある。