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自治体の関与 広がらず
子どもが幼いほど、養育費の支払いは長期間に及ぶ。子どもの権利である養育費が、途切れないようにするために必要なことは何か。
■借金しながら
関東地方の40代会社員男性は「離婚した時が年収のピークだった」と振り返る。
5年前、養育費の金額の目安を示した裁判所の算定表を基に、子ども2人に月計13万円を支払う取り決めを妻と交わして調停離婚した。
通信機器販売の営業職。2年ほどは順調に支払えたが、収入は営業成績に応じて変動するため、その後のコロナ禍で営業先に出入りできなくなると大きく落ち込んだ。送金が3万円にとどまったり、全くできなかったりして、離婚時に契約した養育費保証会社に立て替えてもらった分を含め、現在までに8か月分を滞納。借金もしながら分割返済を続けているという。
減額を求める調停手続きはあるが、元妻に連絡を入れても取り合ってもらえず、それ以上、行動する気になれずにいる。「払う責任は感じているが、今の自分に13万円は大きすぎる」
■交渉 支援があれば
「払って当たり前だと思うものの、現実は大変」
2年前に離婚し、娘に月16万円を支払う東京都の会社経営の40代父親も、そう語る。
離婚時、元妻に公正証書の作成や養育費保証会社との契約を求められた時は「信用されていないのか」と複雑な気持ちを抱いたが、その後に再婚すると「目の前の生活費に比べて、支払いの優先度が上がらない」ことを身をもって知った。もちろん娘への愛情はあるが、「契約で固められているから払い続けられる面もある」と実感する。
周囲の離婚経験者には自営業の人や中小企業で働く人もいる。収入が不安定で、生活が厳しい時期に養育費を払えなくなり、「次第にそれに慣れてしまうように見える」。払うか払わないかの二択だけでなく、「例えば『利子をつけて後払いする』など父母間の交渉をサポートしてくれる公的な相談窓口があれば、支払う人も受け取れる人も増えるのでは」と投げかける。
■海外では
夫婦で合意し、役所に離婚届を出せば成立する「協議離婚」が約9割を占める日本に対し、海外では離婚にも裁判手続きが必要な国が多い。子どもが未成年の場合、養育費の適切な取り決めがないと、裁判官が離婚を認めないこともある。不払い時にも公的機関が関与する。法務省の2020年の調査では「立て替え払い」や「強制徴収」の制度があり、韓国やフランスは両方の制度の特徴を持つ。
スウェーデンなどの北欧諸国やドイツが採用する立て替え払いは、公的機関が養育費を公金で立て替えた上で、別居親から回収する。イギリスやアメリカなどが実施する強制徴収は公的機関が別居親の給与などから天引きし、ひとり親に送金する。不払いの親には、運転免許やパスポートの一時停止、裁判所侮辱罪の適用といった厳しい措置が取られることもある。
国内でも、払われない養育費を子どもが受け取れるよう、支援する自治体がある。
兵庫県明石市は22年度から、子ども1人につき月5万円まで、最大3か月分を立て替えた上で、別居の親に請求する事業を実施している。さいたま市も今年度、同様の事業を導入した。ただ、こうした取り組みは広がりを欠いており、住む地域によって得られる支援に差がある。
5月に成立した改正民法の付帯決議では「(日本においても)公的機関による立て替え払い制度などの検討を深める」ことが盛り込まれた。
千葉大教授(社会保障論)の大石亜希子さんは「育児も仕事も一人でこなすひとり親に、強制執行などの裁判手続きまで背負う余裕はない」と指摘。「子どもに毎月、確実に届けるには、海外のように不履行に備えた立て替え払い制度や養育費徴収機関の設立が望ましい」と提言する。
(第2部おわり。久場俊子、生田ちひろが担当しました)
親の責任、愛情の証し
5人の子に月計15万円を払う関西地方の40代父親
習い事や育児方針などを全て元妻と義父母に決められ、疎外感や窮屈さに耐えられず、離婚した。子どもには会わせる顔がないが、満足な人生を送ってほしいから、せめてお金は渡したい。養育費は元妻のためのものではなく、子どもを一人前に育てるためのもの。生活は苦しいが、親としての責任だし、愛情の証しだと思う。
調停の提示額に疑問
元妻と月10万円の養育費を取り決めたという関東地方の40代男性
事実婚を解消し、子ども1人に月10万円を払っていたが、コロナ禍で仕事が減り、今は出せなくなった。自分から別れを切り出したため、調停で示された金額に合意したが、本当は納得していない。相手も働いており、そこまで必要なのかと疑問を感じている。
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