第1部 共同親権<下>

「2人とも親」新しい関係へ 

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「選択肢増える」歓迎/DV被害者から懸念も 

 改正民法の施行後は、過去に離婚した元夫婦も共同親権を選べるようになる。親の離婚を経験した人など、当事者たちはどう受け止めたのか。

■ないがしろにしないで

 「どちらについて行く?」

過去に離婚した父親や母親も、法施行後は共同親権への変更申し立てが可能になる(本文と写真は関係ありません)
過去に離婚した父親や母親も、法施行後は共同親権への変更申し立てが可能になる(本文と写真は関係ありません)

 小学生の時に親の離婚を経験した横浜市の女性(21)はそう聞かれ、板挟みに遭った。さみしさが募り、再婚した母親に「お父さんに会いたい」と言うと責められた。嫌われるのが怖くて、それ以上何も言えなくなった。

 実父を否定する話を聞かされ、「会うのが不安になった」が、大学生になって再会した際、意外にも普通に会話ができ、成長を喜んでくれた。「悪い『夫』が、悪い『父』とは限らないと思った」

 もし共同親権で父母に育ててもらえていたら――。それでも別の悩みが生まれたかもしれないと想像する。「制度の善しあしはよく分からない。ただ、子どもは親の決定を受け入れるしかない。だからこそ、親は子どもの気持ちをないがしろにしないでほしい」と訴える。

 父子家庭で育った関東在住の30代女性は「選択肢が増えるのはうれしい」と共同親権の導入を喜ぶ。母とは幼い頃から毎月会えたが、親同士に会話は一切なかった。父は親権を母に奪われる不安を抱えるせいか、行動の監視ぶりもひどかった。

 「共同親権が選べたなら、あんなに争わずに済んだだろうし、母も育児に意見が言えて、私も相談しやすかったはず。親は2人いるのだから、2人に育ててほしかった」

■不安消えず

 親権を巡る争いが絶えない中、懸念の声も根強い。

 「今も元夫と関わるため、精神的にギリギリで、娘にあたってしまうことがある」。愛知県の50代女性は、精神的に支配しようとする元夫の言動で追い詰められ、4年前に離婚した。元夫と娘の親子交流を巡り、調停中だが、「もし共同親権の争いまで加われば心が壊れる」とうなだれる。

 改正法はDV(家庭内暴力)の恐れがあれば、家庭裁判所は単独親権にしないといけないと定めるが、「家庭内の出来事の証明は難しく、精神的被害がどこまで理解されるのか」と不安がる。

 法施行後、家裁に共同親権への変更申し立てがどの程度寄せられるのかは未知数だ。

 離れて暮らす小学生の息子と毎月会っているという近畿在住の50代男性は「共同親権は歓迎するが、息子との関わり方に大きな変化が起きるとは思えない」。手続きに費やす時間や負担を考えれば、申し立てる考えはないという。

■気持ち切り替え

 「共同親権で子どもは『親は2人』だと実感できる。いろんな場面でもう一人の親に頼ったり、相談したりできる意義は大きい」。大阪市で社会保険労務士事務所を経営する 築城ついき 由佳さん(46)は前向きに評価する一人だ。

 約10年前に離婚し、12歳の娘と暮らす。当初は元夫と娘を会わせることに強い拒否感があった。ある時、「相手を責める気持ちをやめてみよう」と切り替えたところ、それまで「行きたくない」と渋っていた娘が「楽しかった」と口にするように。親の影響の大きさとともに、娘の気持ちにも気づいたという。

 その体験から現在は親子交流を支援するNPO法人「ハッピーシェアリング」を運営する。「相手は子育てというプロジェクトを共に担う『ビジネスパートナー』のような存在。割り切って話し合える関係が築けるなら、親も育児を一人で抱え込まずに済むのでは」と呼びかける。

 野沢慎司・明治学院大教授(家族社会学)は「親権は親の『権利』というより、子どもに対する『責任』であり、子どもは親の婚姻状態とは無関係に、両親に養育される『権利』を持っている」と指摘する。「ただ、信頼関係を失った2人だけで取り組むのは難しい。離婚後の元夫婦や親子の関係のあり方、子どもの心情について学べる講座を提供するなど、共同親権を機能させる仕組みを国が整備すべきだ」と提言する。

 離婚当事者の相談に応じている東京都の公認心理師、綿谷翔さん(40) 

 小学生の頃に親が離婚した。母親の再婚で見知らぬ土地に引っ越し、実父に会えなくなった。共同親権は子どもにとって、別居する親に会いたい時に会う「アクセス権」だと思う。一方の親とその祖父母に会えず、支援を得られなくなるのは子どもへの人権侵害だ。共同親権の意義が浸透してほしい。

 中学生を育てる50代母親 

 約10年前に調停離婚したが、DVの証拠にしていたメモは既に破棄してしまった。元夫が家裁に共同親権への変更を申し立てないことを祈るしかない。

(久場俊子、生田ちひろが担当しました)

◆今後は養育費や親子交流などについて考える予定です。離婚を巡る体験談や連載への感想をお寄せください。〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部生活課「離婚と子ども」係へ。ファクスは06・6365・7521、メールはseikatsu@yomiuri.com

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