ドローン兵器、学生寮の部屋から前線へ…侵略3年のウクライナ「戦争がなかったら何をしていたんだろう」
完了しました
【キーウ=上杉洋司】ロシアによる侵略から24日で3年を迎えるウクライナでは、軍が使用する小型無人機(ドローン)が戦況を左右しうる重要な兵器となっている。その大量生産の一翼を担っているのは、市民による活動だ。
キーウ工科大学で航空宇宙工学を学ぶ1年生のソフィア・ルドネバさん(17)の「工房」は、ルームメートと3人で暮らす学生寮の部屋だ。ゴーグルを装着して空からの視点で操縦が可能な「FPV(ファースト・パーソン・ビュー=一人称視点)」の無人機をこれまでに13機作り、前線の部隊に送ってきた。
「一つのミスが原因で無人機が飛ばないこともある」と真剣な表情で、赤、青、黄色の配線を基板に取り付ける。手や指はハンダ付けの作業で何度もやけどした。
完成品は「自撮り」をしてインスタグラムに投稿する。1機あたり約1万2000フリブニャ(約4万3000円)の製作費は、クラウドファンディングで寄付を募っている。
ウクライナでは、現在1日数千機のFPV無人機が生産されている。爆弾を搭載して敵に体当たりする「自爆型」としても使われるため、生産量が多すぎて困ることはない。
ソフィアさんは、戦況が厳しさを増した2023年秋頃、ユーチューブの動画で無人機の作り方を学び始めた。小型カメラや通信機などの部品はインターネット通販でそろえる。
昨年春、激戦が続く東部ドネツク州の部隊に初めて無人機を送ると、兵士から2通のビデオメッセージがSNSに届いた。一つは「君の無人機は任務をこなしている」という感謝の動画。もう一つは、送った無人機のカメラが露軍がいる森を写した映像だった。
ソフィアさんが生まれ育った東部セベロドネツクは今、露軍の支配下にある。22年3月5日、両親と双子の妹と暮らす集合住宅を露軍の砲弾が直撃した。幸いけが人はいなかったが、知人のいる西部ルーツクに避難。それからまもなく3年を迎えようとしている。
音楽とダンスが好きで、飛行機やロケットには今も興味はない。「工科大への進学を選んだのは、無人機を作るのに役立つかもと思ったから。もし戦争がなかったら、何をしていたんだろう。もう想像できない」。生まれ故郷に帰れる日まで無人機を作り続ける。そう心に決めている。