接待に若い女性を「利用」する日本…ヨーロッパで歓迎される接待とは
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元タレント中居正広さんと女性との間に起きた問題をめぐる報道が続いています。中居さんが出演する番組を放送していたフジテレビは、1月27日に2度目の記者会見を開催。港浩一社長(当時)は、「中居氏に適切な検証を行わず番組出演を継続した」「タレントや関係者との会食のあり方について検証できていなかった」と謝罪しました。そうした中、テレビ局だけではない、日本の「接待文化」のあり方にスポットが当たりました。
もちろん、日本企業の全てが、接待の場に女性社員を同席させ、取引先にお酌をさせているわけではありません。とはいえ、「昭和」の感覚をいまだ引きずる世代では、「酒席に若い女性がいると場が和む」「華やぐ」などと認識している人が少なくないでしょう。こうした感覚は、海外にもあるのでしょうか。今回は、ヨーロッパと日本の「接待文化」の違いについて考えてみたいと思います。
「決裁権のあるポジション」は男性ばかり
今回起きた問題から感じたのは、日本には「取引先のゴキゲンを取るため若い女性を使う」企業が依然として存在する、ということです。
ある日本人男性に見解を聞くと、「そりゃ、若い女性が隣にいればキゲン良くなるのは当たり前でしょ」と即答されました。当然のことを聞いてどうするんだ? 男性はそんな顔をしていました。
筆者の出身、ドイツにも「会社員の女性が取引先と食事をともにする」接待はあります。しかし、日本の「接待」とヨーロッパの「接待」には、大きな違いがあるのです。
ドイツで女性社員が接待の場に同席するのは、女性が普段からチームのメンバーとしてその案件にかかわっている場合です。日本のように、「若い女の子がいると取引先が喜ぶから」などの理由で、案件とあまり関係のない若い女性が駆り出される――という話は聞いたことがありません。
以前、日本で働くドイツ人男性との会話で、「日本の接待」を話題にしたことがありました。その男性は、「仕事とはいえ、普段接していない人といきなり席が隣になっても話が弾まない」と困惑していました。これだけでは、筆者が女性だから、男性は気を利かせてそう答えたのだと思われるかもしれません。しかし、筆者の印象だと、同じような感覚を持つドイツ人男性がほとんどのような気がします。
というのも、ドイツにはそもそも「 若い女性を無条件で良しとする 」文化がないからです。そして、現在のドイツでは、接待される側である「決裁権のあるポジション」に女性が就いているケースも増えています。そういった意味でも、「若い女性を同席させてゴキゲンを取る」という手法が成り立たないわけです。
日本で若い女性社員が接待の場に駆り出されがちなのは、「企業の中で決裁権を持つ立場にある人のほとんどが男性である」ということも関係しているのではないでしょうか。2回にわたり行われたフジテレビの記者会見で、経営陣が座る席には高齢の男性がバーッと並んでいました。その光景を見て、筆者は「あぁ、日本は本当に男性社会なんだなぁ」と改めて感じました。
ヨーロッパの接待「パートナー同伴」も
では、ヨーロッパの接待では、どのようにして取引先のゴキゲンを取っているのか。会食のアポイントを取る際に、「よろしければ配偶者もご一緒にどうぞ」と誘うケースがよくあります。
会食や接待は「夜」に行われることが多いですが、ヨーロッパには「ディナーはカップルで」という感覚もありますから、「どうぞ、遠慮せずにパートナーの方もご一緒に。費用はこちらで持ちますよ」という形で、取引先への気づかいを見せるのです。「よく知らない若い女の子」を呼ぶぐらいなら、パートナーの同席を許す方が、相手に喜んでもらえる、ということです。そんなわけで、パートナーを伴ってコミュニケーションを深めるヨーロッパの接待には、どこか「ほのぼの感」が漂うのでした。
ただ、ドイツの場合、ビジネスの場において「飲食を通して交流を深める」のはあまり一般的ではなく、「仕事がらみの会食」は日本ほど多くありません。女性が男性にお酌をする文化もないので、女性が男性客をもてなす、キャバクラや高級クラブもありません。そもそも、昔からの伝統として、ワインをグラスに注ぐのは女性ではなく男性であるという不文律があります。
ヨーロッパで育ったせいにはしたくないのですが、筆者はお酒の席で致命的と言っていいほど、気が利きません。20代の頃から日本に住んでいますが、周囲もこのことを十分承知していたのか、幸いにも会食で「日本人的な気づかい」を要求されることはありませんでした。では、どんな会話をしていたのかというと、筆者が南ドイツのミュンヘン出身だと知り、相手の日本人男性が「ドイツのビアホール」の話題を振る、筆者がそれに応えて、ミュンヘンのビアホールや、世界最大のビールの祭典「オクトーバーフェスト」の話をする――という流れになることが多かったです。この話は、そこそこ盛り上がるので、大いに助かりました。
ここまでお読みいただいた読者は、既にお察しかもしれませんが、筆者はいわゆる「仕事の飲みの席」で嫌な思いをした経験がありません。でも、「自分の身に嫌なことが起きなかったから、ほかの女性も理不尽な目に合うことはないはずだ」とは、全く考えていません。
ここからは、ごく「個人的なつぶやき」と捉えていただきたいのですが、筆者がドイツ出身で、かつ大柄な体格であることなど、さまざまな要素が関係しているのだと思います。「サンドラさんにセクハラとかしたら国際問題になりそうだもんなぁ」。ある飲み会での、酔っ払った日本人男性の言葉です。筆者も含め、みんなで大笑いしましたが、あながち間違いとは言えないでしょう。
日本人男性の「友だち連れて来て」は要注意
仕事でもプライベートでも、日本人男性は「若い女性と飲みたい」という下心を持っていることが多い印象です。日独ハーフの筆者は10年以上前、日本における「ハーフ」の存在に焦点を当てた本を出版しました。執筆の過程で、日本で暮らすハーフの人たちに「いじめ」「アイデンティティー」「国籍」といったテーマで取材を重ねました。ついうっかり、「今いろんなハーフの人に話を聞いている」と周囲に話すと、浮かれ気味の男性たちから「ハーフの女の子紹介してよ、一緒に飲もうよ!」という要望が殺到しました。
もちろん、「ハーフの人と友達になりたい」という思いを否定はしませんが、「いじめ」「アイデンティティー」「国籍」について何の興味もないのに、ただ「若いハーフの女の子と飲みたい」と望む男性たちに、「スキあらば性的な関係に持っていきたい」気配を感じたこともありました。そういう男性は「夜の時間帯」にこだわるのが特徴で、筆者が「週末にみんなでランチしましょう」と提案すると、不機嫌になったり逃げたりしますので、非常に分かりやすかったです。
「接待」「ホームパーティー」=悪ではない
日本との違いについて、「ドイツにキャバクラや高級クラブはない」「女性がお酌をする文化もない」「配偶者ウェルカムな接待が喜ばれる」と書きましたが、一つ言いたいのは「女性の構えも違う」ということです。
日本の「接待文化」がなくならない理由を、女性の側に探すつもりは毛頭ありませんが、ドイツで生活したことのある身としては、やはり「醸し出す雰囲気」が、ドイツ女性と日本女性とでは違う気がします。
たとえば、ベジタリアンのドイツ人女性なら、平社員であっても自分の都合に合わせて接待の場をベジタリアンメニューのある店にするよう声高に要求しますし、取引先が配偶者を連れてくるなら私も……と堂々と彼氏を連れてきかねません。ドイツには、女性が男性の話をひたすら聞いて「すごーい」と持ち上げる文化もありませんから、女性主導で女性がしたい会話が進むのも珍しいことではないです。
ところで、今回の中居正広さんと女性の問題を受けて、バーべーキューなどのホームパーティーを「悪」とする論調もあり、筆者はこれを残念に思っています。
ドイツを含むヨーロッパでは、割と気軽に人を自宅に招きますし、ホームパーティーをきっかけに交流を深める機会も多いのです。念のために言うと、「交流を深める」というのは性的な意味ではなく、リラックスした雰囲気の中でいろんな人と話をする、社交するという意味です。
筆者もホームパーティーが好きで、自分で開く機会はそれほどありませんが、人のホームパーティーには喜んで出かけていくタイプです。今回のトラブルが報じられたことで、「ホームパーティーは危ない」などという話になったら嫌だな、と案じています。
「接待」や「ホームパーティー」がダメなのではなく、悪いのは「女性は男性を楽しませるために存在している」と思い込んでいる人たちの認識です。この偏った感覚を一掃しない限り、例えば企業が会食や懇親に関するルールを設けたとしても、また違う場所でトラブルが起きるのではないかと危惧しています。(コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)