サンドラがみる女の生き方

日本特有? ヨーロッパに「パパ活」がない理由

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先日、あるSNSで「パパ活」にまつわるコメントをしたところ、日本語の分かる外国人の知り合いから「パパ活って何ですか?」との質問を受けました。確かに「パパ活」という言葉は分かりにくく、言葉だけをパッと見ると、「父親が懸命に育児をすることかな」などと思ってしまいそうです。

パパ活とは、「若い女性が年上の男性に食事をごちそうしてもらい、お小遣いをもらうこと」だと説明すると、だいたい驚かれます。さて、今回はそんなパパ活について、非難するのではなく、かといって推奨するのでもなく、あくまでもニッポンとヨーロッパの「違い」に焦点を当てて論じてみたいと思います。

ヨーロッパでは若くてもチヤホヤされない!?

日本では若い女性がちやほやされがちですが…(写真はイメージです)

先に書いてしまうと、ドイツを含むヨーロッパでは、パパ活は日本と同じ形では存在しません。

理由の一つに、ヨーロッパの社会では、若い女性が日本ほどチヤホヤされない、という点が挙げられます。日本では「若い女性」は何かとチヤホヤされますが、これがドイツだとそうでもありません。日本でよく聞かれるような「若いっていいですね」というような発言もあまり聞かないのです。

ヨーロッパはもっとドライです。若い女性に対しても、年齢を重ねた女性に対しても、扱いにさほど差はありません。実際の生活でも、言ってみれば20代も50代も同じように扱われます。「若さ」にあまり重点がおかれていないのです。

そういったなかで、「どうしても20代の若い女性とデートがしたい」と考える中高年の男性がいないとは言いませんが、「若い女性が好き」といった感覚を前面に出すのは社会的に恥ずかしいとされているため、パパ活のようなものは一般的ではありません。それらしきカップルも街中であまり見かけません。そんなこんなで、「若い女性=価値がある」という前提そのものがないので、当然、パパ活の需要もないのでした。

年の差カップルへの世間の「厳しい目」

ドイツの場合、男性が明らかに自分よりも何十歳も年下の女性を連れて歩いていると、レストランなどでも時に冷たい視線を浴びますし、好奇の目で見られがちです。偏見も入っているのですが、「あんなに年上の男性が、あれほど年下の女性を連れているのは『純粋な恋愛』などではなく、お金にモノを言わせているのだろう」と思われがちであり、あまり好意的に捉えられません。

そもそもなぜ、筆者がそんな「世間の目」を敏感に感じたのかというと、筆者の両親に20歳の年齢差があったからです。念のために書くと、筆者の両親はパパ活で知り合ったわけではありませんが、年齢差が大きいことから、ドイツでは外出時に好奇の目で見られる、ということがよくありました。それが嫌で、思春期だった頃の筆者は、よく両親との外出を拒否していました。

45歳も年下の奥さんがいる加藤茶さんのような「年の差カップル」は、日本では時に「ほほえましい」と見られますが、ドイツで向けられる視線はシビアだったりします。当然、そういった意味でも、パパ活は成り立ちません。

ドイツの男性はケチ?

総合的に見ると、ドイツの男性の方が日本の男性よりも金銭感覚がシビア、つまり良い言い方をすれば、節約家が多いのは確かです。

よって、彼らの多くが若い女性との会話や食事を楽しむために、何万円(あ、ユーロなので、何百ユーロでしたね)も払うとは考えにくく、このあたりもパパ活が存在しない理由かもしれません。

パパ活自体が「お金を払ってでも若い女性と食事や会話をしたい金払いの良い男性 」と「お小遣いのためなら自分とは世界観の違う年上の男性と出かけることもいとわない女性」という、需要と供給がないと成り立ちません。ヨーロッパでは、パパ活に関する需要と供給がそもそもないのかもしれません。もちろん、ヨーロッパの女性は、化粧品やブランドに日本人女性ほどお金をかけないこと、またドイツに関しては多くの大学が国立であるため学費がほとんどかからない、といったその国の事情が関係しているのも確かです。

かつて心理学者の小倉千加子さんは「結婚は『カネ』と『カオ』の交換」と言いましたが、現在のパパ活も「男性のカネと女性のカオや若さの交換」がベースにあるところは見事に同じです。それにしても、先ほど「ヨーロッパはもっとドライ」と書きましたが、こうやって考えてみると、ヨーロッパ人がドライなのか、日本人がドライなのか、ちょっとよく分からなくなってきました。

パパ活を誤解するヨーロッパ人

前述の通り、ヨーロッパには節約家が多く、「若い女性にはそれだけで価値がある」というような感覚が薄いため、多くのヨーロッパ人男性にとって「若い女性と食事をするため“だけ”に何万円もお金を払う」というのは、信じられないことです。そのため、ニッポンのパパ活というものをドイツ人に説明すると、「それはうそだ。一緒に食事をするためだけに、お金を払っているはずがない。絶対、その後に『それ以上』のことをしているはずだ」と反論されることも多いのです。

ちなみに昔、「銀座のクラブ」についてドイツ人に説明した時も、同じ反応でした。そんなこんなで、銀座のクラブもパパ活も、ヨーロッパ人男性には「会話をしたりお酒を飲んだりする以上のことが毎回行われているに違いない」と誤解されがちです。

まあ、よく考えてみれば、パパ活なるものを外国人に理解してもらう必要などないのかもしれません。でも、「その国で実際に起きていること」は多少、下世話なものであっても、他の国の人たちにもいろいろ知ってほしいな、と思ってしまうのでした。

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プロフィル

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年以上。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」。著書に「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)など。新著は「ドイツの女性はヒールを履かない――無理しない、ストレスから自由になる生き方」(自由国民社)。
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4101812 0 大手小町 2023/05/31 14:37:30 2023/05/31 14:37:30 /media/2019/01/b037a3a8ef410831710c1a5cbdfe845d.jpg?type=thumbnail

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