「情報的健康」へデジタル・ダイエット宣言…[情報偏食]第1部<特別編>

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 東京大の鳥海不二夫教授、慶応大の山本龍彦教授が共同で提言した「デジタル・ダイエット宣言」は、言論空間の危機が深刻化しているという問題意識のもとに編まれた。日常の情報摂取を食事にたとえ、「情報的健康」の重要さを訴える。「デジタル空間とどう向き合うか」(日経BP)の共著もある2人に話を聞いた。

食事と一緒 バランス大事…鳥海不二夫氏 46 東京大教授(計算社会科学)

 とりうみ・ふじお 1976年、長野県生まれ。2004年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了後、21年4月から現職。SNSのデータ分析や社会への人工知能の応用が研究テーマで、編著に「計算社会科学入門」(丸善出版)など。
 とりうみ・ふじお 1976年、長野県生まれ。2004年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了後、21年4月から現職。SNSのデータ分析や社会への人工知能の応用が研究テーマで、編著に「計算社会科学入門」(丸善出版)など。

 情報空間で起きる問題の根底には、人間が先天的に持つ 脆弱ぜいじゃく 性がある。

 コロナ禍では、ワクチンを巡る真偽不明の情報が数多く流布された。不確かな情報をどういう人たちが得ているか分析したところ、もともとワクチン自体に反対している人々や、左派の一部の人たち、陰謀論的な発信をする人々が多かった。一方で、ワクチン推進派は、保守系の人たちが多数みられた。

 人は情報が正しいか、正しくないかという点を、自身の主義主張と整合性があるかによって判断しがちだ。例えば「良い政府が推奨するワクチンは、良いもの」「悪い政府が推奨するワクチンは、悪いもの」という情報は受け入れられやすい。

 逆に「良い政府が推奨するワクチンだが、悪いもの」「悪い政府が推奨するワクチンだが、良いもの」という説明を受け入れるのは難しい。

 このような心理状態は、「認知的均衡理論」によって説明される。

 人間の認知システムには、反射的に動く「システム1」と、じっくり考えて反応する「システム2」の2通りがあり、私たちは基本的にシステム1で動いていると言われている。

 システム1を刺激し、どれだけ関心を奪えるかを競って広告収入につなげる「アテンション・エコノミー」の広がりも情報空間で起きる弊害の要因となっている。発信者側が、多くの人々の興味を引く情報を提供しようとすれば、デマや陰謀論も発信の対象になり得るからだ。

 ただ、アテンション・エコノミーは、プラットフォーマーにとって都合が良く、ユーザーにも便利で、当面は仕組みを変えることは難しいだろう。私たちは、プラットフォーマーが自分の関心に応じて提供する情報だけに包まれる「フィルターバブル」の中にいることを認識する必要がある。

 「デジタル・ダイエット宣言」では、ネット空間での情報摂取を食事に置き換えて考えている。人間はおいしいものばかりを食べたがるが、それだけでは健康に悪い。だが、将来的に健康を害することを知れば、バランスの取れた食生活を心がけることができる。情報を得る際にも、こうした考えが応用できる。

 ただ、暴飲暴食を強制的にやめさせることができないのと同様に、人々が得る情報を規制するべきではない。大事なのは、バランスが取れた情報を適切に取得したいと願う人にそうした環境を提供することだ。ユーザーが自分の「情報的健康」を確認できるように、「情報ドック」を作ることも大事だと考えている。

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