施設での高齢者虐待が過去最多に…「防止意識の高まり」半面、職員の知識不足も影響か
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愛媛県は2023年度に認知した高齢者の虐待件数を発表した。介護施設での虐待は18件で、統計を取り始めた07年度以降で最多だった。県長寿介護課は「事業者の意識の高まりから、問題が表面化しやすくなったのが一因」と分析する。一方、施設職員の知識不足も背景にあるといい、対策が急がれる。(黒岩美緒)
同課によると、過去5年間で虐待と認定されたのは19年度8件、20年度4件、21年度13件、22年度12件、23年度18件だった。
担当者は「件数が増えたというより、各施設で防止への意識が高まり、以前は表面化していなかった事案も把握できるようになったと考えられる」とする。23年度には23件の通報や相談が寄せられ、半数以上は施設の職員らからだった。
虐待の種別は、身体的虐待が78・9%で最も多く、心理的虐待が31・6%、介護等放棄は15・8%、経済的虐待は5・3%と続いた。性的虐待は確認されなかった。
介護老人保健施設の90歳代女性が職員から暴力を振るわれたり、有料老人ホームで90歳代と70歳代の男性がミトンや布ひもを使って拘束されたりする事例が確認されたという。いずれも、施設が自治体の指導を受け、改善計画書を提出している。
虐待の発生要因は「これくらいなら虐待にあたらないだろう」と職員が認識してしまうなど、教育や知識不足によるものが最多(33・3%)だった。他には、職員のストレスや感情コントロールの問題(16・7%)、虐待を助長する組織風土や管理体制(16・7%)などがあった。
近年の状況を受け、県は23年度、年1回行っている事業者向けの研修会を年2回に増やすなどの取り組みを強化。具体的な事例を紹介し、どのような行為が虐待にあたるのかを周知したり、参加者同士で防止策や早期発見に向けた対策を共有したりしている。
また、上司や管理者に虐待を報告できる体制の整備や研修の実施、施設内に虐待防止委員会を設置することなど、通報・相談をしやすい環境を作ることも呼びかけているという。
同課の担当者は「件数が過去最多となったのは決して望ましいことではないが、各事業者の意識が高まった結果でもある。引き続き啓発活動や研修会などで、虐待防止を働きかける」としている。