ウクライナ侵攻とテレビ、日本で存在感増すBBC…カギは「多角的報道」

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 ロシアによるウクライナへの侵攻で、英国の公共放送BBCをはじめ、海外のテレビ局の存在感が増してきている。インターネット配信やケーブルテレビなどで、日本の視聴者が、海外の放送局のニュース番組などを見る動きも広がってきた。取材スタッフの安全を確保しながら深刻な現実をいかに届けるか、国内放送局のニュースの伝え方が問われている。(文化部メディア班)

ウクライナ情勢を伝えるサラ・レインズフォード特派員(c)BBC
ウクライナ情勢を伝えるサラ・レインズフォード特派員(c)BBC

ネットで身近になった海外のニュースチャンネル

 1991年の湾岸戦争や、2001年の米・同時テロなど、多くの人が犠牲になり、悲惨な映像が日本に届くような国際的な出来事は、過去に何度かあった。その中で、今回の特徴は、発達したインターネットなどを通して、BBCやCNNなど海外の放送局の報道に、より触れやすくなり、視聴者がNHKや民放各社の報道と見比べて情報を得る状況が広がっていることだ。

 BBCグローバルニュースジャパンによると、国際報道に強みがあるBBCは3月4日時点で、少なくとも20チームをウクライナの首都・キエフや西部リビウをはじめ、同国内や関係国に配置しているという。2021年にロシアからビザ更新を拒否されたサラ・レインズフォード特派員をはじめ、経験豊かなスタッフも多い。同局は、これらのニュースを海外向けの国際放送「BBCワールドニュース」として提供している。

 同チャンネルは、日本国内では、ケーブルテレビのJ:COMをはじめ、Amazonプライム・ビデオやHuluなどのインターネット配信などでも見られる。国内のべ490万世帯で視聴が可能になっている。

 さらに同局の存在感を強めているのは、同チャンネルをインターネット上のサイト「Yahoo!ニュース」などで配信していることだ。ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2月24日以降、配信を強化し、同日正午からはトップページに配置。1日の配信時間も通常より7・5時間延長し、計14時間の配信を行った。現在も随時、トップページに載せているという。

 一方、インターネットサイトの「BBCニュース日本語版」のページビュー数は、ウクライナ侵攻が始まった2月24日から3月2日の1週間で、それまでの週平均の4・4倍に伸びた。

国内各局も総力取材…「できるだけ人の営み交えて伝える」

日本のテレビ各局は、様々な工夫をしてウクライナ報道を続ける。NHKの国際放送のインターネットサービスには、ウクライナ語の字幕がついた(イメージ)
日本のテレビ各局は、様々な工夫をしてウクライナ報道を続ける。NHKの国際放送のインターネットサービスには、ウクライナ語の字幕がついた(イメージ)

 これに対し、国内のテレビ各局も、今回の侵攻を受けて総力を挙げて取材を続ける。フジテレビは2月15日にロンドン支局の記者とパリ支局のカメラマンを、ポーランド南東部の街・ジェシュフに派遣し、16日にウクライナ西部のリビウに入って取材した。その後、ロシアの侵攻が始まった24日に、ポーランド側に向けて出国した。ポーランド側には23日からイスタンブール支局の記者とカメラマンも来ており、現在、2班体制で米軍の前線基地や避難する人々などを取材しているという。

 混乱している地域での取材は、安全性の確保が最大の課題の一つだ。同局では、現地のウクライナ人のコーディネーターや、土地勘があって車両を持つ人を雇い、常にチームで行動している。さらに、現場と本社のデスクが定期的に連絡を取り合って状況を確認している。

 日本テレビは軍事侵攻開始時まで、通訳やドライバーを含み6人態勢でウクライナ国内で取材していた。侵攻が迫ったと判断した19日に首都キエフから西部のリビウに拠点を移した。「国と国とのぶつかりあいであっても、戦闘が行われている街に私たちと同じ一般の住民がいることに思いをはせてもらうべく、できるだけ人の営みを交えて伝えるよう心がけている」と同局広報部はコメントしている。

ウクライナの首都キエフ市内を取材するTBSの増尾聡記者(2月28日、同局提供)
ウクライナの首都キエフ市内を取材するTBSの増尾聡記者(2月28日、同局提供)

 篠田英朗・東京外国語大教授(国際政治)は、「日本のテレビには、ウクライナの地域情勢だけでなく、国連決議や経済制裁とは何かなど、背景の国際制度にも触れ、多角的な報道を展開してほしい。ネット時代の現代は、海外の研究者ともリモートなどで取材がしやすくなった。世界の研究者やメディアとも効果的に連携することが必要だ」と語る。

SNS時代、テレビ報道の難しさ…「フェイク」をどう見分ける

 SNSの発達で、動画や画像を上げやすくなった現在、多くのテレビ局がこれらを使った報道を行うようになった。これらの現実は、プロのスタッフが費用をかけて取材した映像と、現地の一般人が取った画像や動画との違いは何かを、正面から突きつける。さらに、フェイク動画に翻弄される懸念も生まれるようになった。

 3月に入ってからのテレビ各局の定例記者会見では、各局の首脳陣からこれらの問題への言及が相次いだ。TBSの竹内明報道局長は、「最近は『国家とテロ組織』が戦闘を繰り広げてきた。だが今回は『国家同士』の戦いということで、大規模かつ最新鋭の武器が使われている。関係する複数の国家間で高度な情報戦が繰り広げられている」と指摘する。さらにインターネット上の動画や画像について、「真実性を見極めるのがどんどん難しくなっているのは事実で、フェイク画像も飛びかっている。我々もSNSのチェックはしているが、ソースが確かでない限り使わないようにしており、より厳格に判断しながら真実性を見極めていきたい」と述べた。

 前田晃伸・NHK会長は3日、「(動画などの)ニュースソースが正しいかどうかは本当に難しい問題がある。そこはプロとして、しっかりチェックするしかない。戦争になると、色んな情報そのものが戦争の武器にもなるので、それが本当かも含めて正確に報道することに全力を尽くすしかないと思う」と強調した。

 現在のバイデン大統領とトランプ氏が接戦を繰り広げた2020年の米国大統領選ではうその情報が、民主主義の根本を揺るがすことを全世界に突きつけた。今回のウクライナ侵攻でも、日本のテレビ局がいかに正確で多面的な放送を視聴者に提供するかが、一層問われていきそうだ。

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