[追憶 健さん]没後10年<4>目指すのではない 自分をもっと磨け
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日本が誇る高速鉄道システムに爆弾が仕掛けられた。乗客を人質に身代金を要求する犯人と、警察、国鉄の攻防がノンストップで展開する。高倉健主演で1975年公開のパニック映画「新幹線大爆破」(佐藤純弥監督)は海外を
動画配信ネットフリックスによるリブート(再始動)作品の製作が進んでおり、高倉の薫陶を受けた草なぎ剛が主演する。「今の時代に、健さんの作品を改めて認める機会にもなる。バトンを受け継いでいる感じ。オファーを受けた時は舞い上がった」。新たなスタッフと切り口で原作の魅力を問い直す使命を強く感じている。
交流は2012年の「あなたへ」(降旗康男監督)での共演以前にさかのぼる。09年に起こした事件(後に不起訴)の渦中、手紙が届いた。それまで個人的な付き合いは全くなく、驚いた。
「何通かいただいた」という手紙には、執筆したコラムなどを引用しながら、高倉の人生観がつづられていた。辛抱すること、親孝行への思い。「当時はわからなかったんですけれど、僕に必要なものを提示してくれた。今でも役や人生に迷ったら、時々読み返して原点に戻るんです」
そんな縁が続いて共演につながった「あなたへ」は、高倉演じる刑務所技官・倉島が亡き妻の故郷を目指すロードムービーだ。草なぎは、倉島が旅の途中で出会ういかめしの販売員、田宮役。先を急ぐ倉島を調子よく催事に付き合わせ、年上に甘えるように愚痴をこぼす。実生活での2人の関係性を想像させるやりとりがほほえましい。高倉と、田宮より年長の部下を演じた佐藤浩市に挟まれて酒を飲むシーンが忘れられない。「本物の役者の雰囲気をあれほど感じた現場は後にも先にもなかった」と振り返る。
カメラが回っていない間も高倉と共に過ごした。「人生のどこに重きを置くのかによって、役者としての説得力も変わってくる。役というのは普段の人生がすべて表れる。そんなことをおっしゃっていた」。生涯205本目で遺作となった「あなたへ」の先も見据えていた。「降旗さんと『また、やるぞ』と言ってくれたんですよ」
高倉を「深い海のようで、すごく大きな山のようでもある」と敬愛し、その背中を追い続けてきた草なぎ。だが今、思うのは「目指すのではなく、自分自身を突き詰めていけばいいんじゃないかと。『自分をもっと磨け。俺じゃない、そういうことじゃないんだ』という声が聞こえてくるような気がします」。(木村直子)(おわり)